No. 2201 中国との月面着陸競争、米国は「予定通り」とNASA長官

US ‘on schedule’ in race with China …
… to land people on moon, NASA chief says

最近中国は4度目の無人宇宙船を月に着陸させたが、NASAのビル・ネルソン長官は米国は数年以内に宇宙飛行士を月面に帰還させるだろうと語っている。

by Christian Davenport

今月初め中国の宇宙船は、今回は月の裏側からサンプルを採取するために月面に着陸した。NASAのビル・ネルソン長官は、米国が長年培ってきた宇宙での優位性に挑戦している国を祝福した。ネルソンは中国の4度目の月面着陸の成功に感銘を受けたと語った。

「私はこれまで、米国は中国と宇宙開発競争をしていて、中国が非常に優秀であるとフェアに指摘してきた。特にここ10年、中国は多くの成功を収めている。彼らはたいてい本心を言い、そして言ったことを実行している」とワシントンポストの最近のインタビューでこう語った。

しかし中国が地球低軌道に宇宙ステーションを設置したり、2021年に火星に探査機を着陸させたりと、宇宙で多くの成果を上げているにもかかわらず、米国は中国より早く月面に宇宙飛行士を帰還させる予定だとネルソンは述べた。

NASAはいつの日か、太陽系で最もホットな不動産である「月の南極」に永続的な存在を築くことを計画している。その目標に向けた重要な一歩として、NASAは来年後半に4人の宇宙飛行士を月周回飛行させ、2026年後半には1972年のアポロミッション以来初めて月面に着陸させるつもりだ。

「われわれは予定通り進んでいると思う」とネルソンは言った。

しかしそのスケジュールは、宇宙飛行士を月周辺に送迎するためのカプセルの熱シールドの性能をよりよく理解するための努力といった技術的な課題のために数回延期されている。NASAの監察総監が春に発表した報告書{1}によると、2022年に無人で月周辺をテスト飛行した際、NASAのオリオン宇宙船の熱シールドは大気圏を突入する際に100カ所以上で「予想とは異なる形で摩耗した」という。数か所には塊で引きちぎられたような、素材にポットホールのような傷跡が残っていた。

「将来のアルテミス・ミッションでもし同じ問題が発生すれば、機体やクルーの死亡につながる可能性がある」と報告書は結論づけている。

人類を月に帰還させるNASAの計画は複雑だ。オリオンで月周回軌道に乗せ、それからスペースXのスターシップが宇宙飛行士を月面まで運ぶ。スターシップはその後、宇宙飛行士を地球へ帰還させるために月周回軌道上でオリオンと合流することになる。

スターシップは月面着陸という重要な役割があるため、NASAはその開発を注視している。スペースX社は最近、この巨大な宇宙船の4回目のテスト飛行{2}を行った。この宇宙船はこれまでで最大かつ最も強力なものであり、同社によれば、地球をほぼ一周し、それはほぼ成功したのでそれによって急速な開発が続けられるという。

ネルソンは、NASAが中国より先に月に到達できるかどうかの「良い指標」は、スペースX社の最後のスターシップ飛行の成功だと述べた。しかしこのイーロン・マスクの会社はまだ、宇宙船が地球周回軌道上でタンカー宇宙船群から燃料を補給できること、人類を安全に飛行させること、そして月面に軟着陸させることができることを実証する必要が残っている。

米国も中国も最終的には月の南極{3}に宿営地を設置することを目指している。そこには永久に影のクレーターに、氷の形で水がある。水は生命維持に不可欠なだけでなく、その構成要素である酸素と水素はロケット燃料としても利用できるため太陽系へのさらなる探査が可能になる。

米国と中国は競争をしているが、両国は月とその周辺で共存する方法を見つけなければならないだろうとネルソンは言う。また両国の宇宙開発計画は、宇宙における脅威によって結びついていると彼は言う。

米国政府の高官たちはロシアが核兵器を開発しており{4}、それを使って地球軌道上で衛星を破壊し、ミサイル警告や偵察、精密弾薬の誘導などに使われる米国の重要な国家安全保障インフラ{5}を麻痺させることができるとしている。ロシアは宇宙への核兵器配備を否定している。

それでも、宇宙空間に資産を持つすべての国、特に、核爆発で使用不能になる可能性のある宇宙船だけでなく、有人宇宙ステーションも運用している中国は関心を持つべきだとネルソンは言う。

この脅威について、ネルソンは初めて公の場でこう語った:

 すべての国は、ロシアが軌道上に核兵器を搭載しようとしていることを懸念すべきだ。そのような能力は、世界中の国や企業が運用するすべての人工衛星や、私たちすべてが依存している重要な通信、科学、気象、農業、商業、国家安全保障サービスに脅威をもたらす可能性がある。ロシアの核爆弾が宇宙空間に投下されれば、中国の宇宙飛行士や宇宙ステーションが脅かされることになる。

そしてこう付け加えた。「これは中国政府にとって好機である。ロシアの核爆弾が宇宙空間に配備されれば、中国の宇宙飛行士と宇宙ステーションは脅威にさらされる。中国はロシアが核兵器を設置しないほうがよいと思っている。だから、ロシアとの立場や、習近平(中国国家主席)とプーチン(ロシア大統領)の関係を利用して、ロシアに核兵器を再考するよう促してはどうだろうか?」

軌道上に核兵器を設置することは1967年の宇宙条約に反する。中国とロシアが宇宙で米国に対抗し続ける中、NASAと国務省はアルテミス協定{6}と呼ばれる国際連合を主導しようとしている。これはおそらく1967年の条約以来、最も重要な国際宇宙政策の取り組みである。

ネルソンやその他の人々が中国に対して、宇宙計画を秘密裏に行っており、また軍の一部門として活動していると批判して圧力をかけるために、この協定に署名した国々は宇宙や月周辺での行動規範を遵守することに同意している。例えば、各国は科学的発見を共有し、月面のどこで何を行っているかを詳細に説明することが求められている。

その一方でNASAの月キャンペーンは続いている。今年、NASAは商業パートナーであるヒューストンのインテュイティブ・マシーンズ社が2機目の無人宇宙船を月面に着陸させることを期待している。また他の民間開発による着陸機も数年後に続く予定である。今年初め、インテュイティブ・マシーンズ社の宇宙船{7}は商用機として初めて月面に着陸し、アポロ時代以来、月面に着陸した最初の米国の宇宙船となった。

しかし中国との宇宙開発競争が語られているわりには、2025年に計画されている月周回飛行ミッション「アルテミス」に参加する宇宙飛行士たちはそう思ってはいないという。

この飛行の指揮官であるNASAのリード・ワイズマン宇宙飛行士は、先日のワシントン・ポスト・ライブのイベント{8}で、「我々はこれが競争だとは感じていない。私たちはこれが探査の正しい方向であり、私たちが向かっている方向であると感じている」と述べた。

「しかし米国人として、プレッシャーが高まっていることは感じている」と付け加えた。

Links:

{1} https://www.washingtonpost.com/technology/2024/05/02/artemis-orion-caapsule-damage/?itid=lk_inline_manual_10

{2} https://www.washingtonpost.com/technology/2024/06/06/spacex-starship-launch-test-flight-nasa/?itid=lk_inline_manual_15

{3} https://www.washingtonpost.com/technology/2022/08/19/nasa-moon-landing-spots-artemis/?itid=lk_inline_manual_19

{4} https://www.washingtonpost.com/technology/2024/02/15/space-weapons-russia-china-starlink/?itid=lk_inline_manual_23

{5} https://www.washingtonpost.com/world/2024/05/22/russia-space-weapon-satellite/?itid=lk_inline_manual_23

{6} https://www.washingtonpost.com/technology/2023/01/14/china-nasa-moon-space/?itid=lk_inline_manual_29

{7} https://www.washingtonpost.com/technology/2024/02/22/moon-landing-intuitive-machines-odysseus-nasa-live/?itid=lk_inline_manual_33

{8} https://www.washingtonpost.com/washington-post-live/2024/06/04/nasas-bid-moon-new-age-space-exploration/?itid=lk_inline_manual_35

https://www.washingtonpost.com/technology/2024/06/24/nasa-china-space-race-moon/