No.895 アメリカ崩壊は近い

日銀は9月の金融経済月報で、国内外の在庫調整はほぼ終わり、新興国など海外経済の改善が続くことで輸出・生産が一層増加し、景気は持ち直していくという見方を示した。

アメリカ崩壊は近い

金融危機のきっかけを作ったアメリカでも、今年になってから株式が急上昇に転じ、繁栄は終わったという悲観論から、アメリカ経済もV字回復の可能性が高まったというエコノミストもいる。しかし在米の友人たちは逆のこと、つまりアメリカ経済が積み上げた借金は限界に達し、もはや破綻フェーズにあると異口同音に言う。

経済学者のハイマン・ミンスキーは、金融システムには安定と不安定の間を行ったり来たりするサイクルがあり、それによって市場は投機と恐慌の両方に陥りやすいと論じた。アメリカでは「市場は効率的なもの」というシカゴ学派が主流であることからこの理論は無視されてきたが、歴史をみれば、投機的にバブルが作られ、それが引き金となって構造的不安定をもたらし、資産価値は暴落して市場が崩壊するというサイクルはくりかえし起きている。過剰な投機からもはや修復不可能な状況にあるアメリカもそうだ。

昨年末、ウォール・ストリート・ジャーナル(オンライン版)は、アメリカの終焉を予測するロシア人教授の記事を掲載した。これまでにもアメリカの崩壊を言い続けてきたロシア外務省外交アカデミーのパナリン教授である。教授によれば、アメリカの金融・経済危機は末期にあり、またイラクやアフガン戦争によって世界で反米感が広がり、よってアメリカは最終的に国家として崩壊し、6つに分断するだろうという。

これまでメディアは予測を黙殺してきたが、アメリカの政策を10年以上にわたりモニターしてきたパナリン教授は、フランスの学者エマニュエル・トッドが1976年にソ連が崩壊することを予想し、嘲笑を受けたことを例に、いずれ自分の予測が正しかったことが証明されるだろうと強気である。そして今年の財政赤字は昨年の4.5倍にも膨れあがり、一方で兵器の売上げは40%も増加するという異常な構造のアメリカから投資家が資本を引き上げ始めれば、ドル売りが加速し、崩壊の速度はさらに速まるだろうという。

日本政府の発表をみても、先進国政府はアメリカの延命に注力していることがうかがわれる。しかしドルが崩壊すればその影響はビジネスに波及し、経済の弱体化から失業が増加、それによる貧困、社会不安となって全世界に及ぶであろう。

ソ連崩壊を予想したトッドは、2002年に、アメリカも崩壊の道を歩んでいると、著書『帝国以後』に著している。

ここでパナリン教授やトッドの予測の正誤を論じるつもりはないが、政府やメディアの報道を盲信すべきではない。アメリカの末期的な腐敗、経済の衰退、生産基盤をなくして消費だけを行ない、そのために過剰な輸入依存となっていること、世界を搾取しまた自国民の貧困も無視する支配者層など、アメリカの事実を冷静に分析することだ。アメリカ崩壊の影響を日本も必ず受ける。しかしそれを最小にするには、早くアメリカ依存から脱却し、独自の道を歩み始めることだ。