No. 1031 日本の原子力政策再考を

今年になってから、フランスの原子力大手企業アレバ社が、日本で原子炉6基を再稼働させる可能性があるとし、同社の最高経営責任者は、数年以内に日本の原子力発電所全体の3分の2は再稼働するだろうと述べたと、ロイター通信が報道した。

またアレバ社は福島の原発事故で延期していた混合酸化物(MOX)燃料の日本向け輸送を再開すると発表した。MOX燃料は使用済み核燃料を再処理してつくったウラン・プルトニウムMOXで、事故を起こした福島第1原発の3号炉もプルサーマル発電でMOX燃料を使用していた。海外の原子力ビジネスパートナーが日本の原発再開についてコメントをするのは、希望的観測なのか、それとも再開を強力にバックアップする安倍自民党政権の方針を受けてのことなのだろうか。

2011年3月の大地震、大津波、そして原子力発電所での事故から2年がたった。つい先日も、福島第1原発で発生している大量の放射能汚染水を東京電力が海洋に放出することを検討していることに対して、地元の漁業関係者が反対をしているという報道があった。原発事故はまだ終わっていないのだ。放射能で汚染された農地で作物を作れない農家の人、収穫した魚から放射能が検出されて販売ができなくなっている漁民、なによりも、立ち入り禁止区域となった地区の住民は今でも自分の家に戻ることができないでいる。

事故のあと、日本の原発は一時すべて停止した。それは1970年以来初めてのことであったという。しかしすぐに、原発がなければ日本は電力不足になる、電力不足になれば経済がだめになるという財界の強い声により、昨年夏、福井県の大飯原発が再稼働した。大飯原発の下には活断層があるとの見方もある。いま地球は、スマトラやパプアニューギニアなどで大地震が頻発するように、地震活動期に入っているのだ。

もう一つの問題は、核のごみとしての使用済み燃料である。日本が原発の使用済み燃料をフランスやイギリスに送って再処理しているのは、青森県六ケ所村に使用済み核燃料再処理工場(再処理工場)は造ったもののいまだに技術的問題から動いてはいないからだ。原子力発電を稼働して核のごみを出し続ければ、国内に危険な核の廃棄物がたまっていくだけなのである。

フィンランドでは世界初となる高レベル放射性廃棄物むけ地層処理場の建設が進んでいる。50年の冷却期間を経て花崗岩の岩盤に奥深く10万年間埋蔵するのだという。もちろんこれが完璧な処理方法なのか、10万年はおろか冷却期間を見届けることも私にはできないが、地震のない固い地盤の上にある国ならではの解決策であろう。しかし地震の巣の上に位置する日本で、この方法は選択肢には入らない。

原発の再稼働を最優先するよりも、福島第1原発の敷地の中でも事故は続いていること、そしてその周辺にいた人々の苦難もいまだに続いているということを、まず政府は考えて日本の原子力政策を再考してほしい。