No. 1122 オスプレイ購入に410億円

一昨年から始まったウクライナ紛争は停戦を経て、再び戦闘が激化している。

ウクライナの2015年度の国防予算は前年比で1.6倍に増加し、徴兵制も復活して大規模な動員が行われている。さらに米国政府はウクライナに対して対戦車ミサイルや防空システムなどの供与を検討しているといい、ウクライナ紛争は欧州諸国に軍事費の増大をもたらした。

国際的な軍事研究機関、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表した欧州の軍事支出に関する報告書によると、ウクライナの政治的および軍事的危機により欧州の多くの国が「脅威の認識」と「軍事戦略の再評価」を強いられ、その結果、軍事支出の増加につながった。

2015年軍事予算の増加率は、前年比でチェコ3.7%、エストニア7.3%、ラトビア15%、リトアニア50%、ノルウェー5.6%、ポーランド20%、ルーマニア4.9%、スロバキア7%、北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないスウェーデンでは5.3%も増えた。バルト諸国の軍事費は世界の国々と比較して絶対値としては少ないが、経済もずっと小さい。そしてこの増大する軍事費で利益を得るのは武器輸出国である。ウクライナにおけるロシアの脅威をあおり、緊張感を高めることが軍産複合体に大きな利益をもたらすのである。

財政危機が起きたギリシャでも突出していたのは軍事費だった。SIPRIによれば、ギリシャの対国内総生産(GDP)における軍事費の割合は2000年は3.6%、2014年でも2.2%と欧州連合(EU)で常にトップで、財政危機に陥りながらもギリシャは借金をし続けて武器を購入した。言い換えると、ドイツやフランスはギリシャへの金融支援の条件に年金や社会保障の削減を求めながら武器を売りつけ、ギリシャの国家財政をより強固にするために軍事費を削減させるという選択肢はなかった。ギリシャの最大の債権者がドイツとフランスの政府であることも偶然ではなく、ギリシャに貸し出されたお金は、ドイツ製レオパルト戦車やフランス製ミラージュ戦闘機に使われたのである。

ギリシャが軍備拡充した理由はトルコだった。米国や西側諸国はNATOの同盟国トルコをギリシャの敵と位置づけて脅威をあおってきた。それにギリシャの腐敗した政治家が便乗し、賄賂をもらいながら武器を買い続けた末路がギリシャの債務危機だったと言える。国際通貨基金(IMF)、軍産複合体、腐敗した政治家によって一般国民は失業や貧困を余儀なくされ、またはウクライナのように国が戦場と化す。このままいけば軍事予算が増大したバルト諸国やポーランドがギリシャに続き、財政危機に直面する可能性は十分にあるだろう。

これは遠い欧州の話ではない。1千兆円を超す長期債務残高を抱える日本は中国の脅威を理由に7月、オスプレイ5機を約410億円で購入することに合意した。攻撃されかかっているから米国と共に戦わなければいけないと安倍首相は言うが、その決まり文句にだまされてはならないのだ。