No.1126 世界同時株安

去る8月24日、世界同時株安が起きた。中国株は2007年以来最悪の値下がりで、欧州市場も下落し、米国ではダウ工業株30種平均が開始直後に千ドルを超す下げとなり、日経平均株価も翌25日に1万8000円を下回った。

株式市場にはさまざまな法則があるとされ、1年のうちで株価が落ち込みやすいのが9~10月だという。1929年の世界大恐慌の始まりも、1987年のブラックマンデー、2008年のリーマンショックも9~10月で、インターネットで検索すると、今秋に世界経済が暴落すると警告を出す欧米のエコノミストやアナリストも多い。

同時株安の原因は中国だと言われている。人民元を切り下げたことで各国の株式市場が下落し、また中国の購買力低下がコモディティ市場の暴落をもたらしたという。諸悪の根源は中国、と思いたいかもしれないが現実はどうだろうか。

1929年のウォール街の大暴落を発端に不況へ突入した米国経済を回復させたのは、1933年にルーズベルト大統領が行った改革だった。労働法を強化して労働者を保護し、賃上げによって所得格差を狭めて富の再配分を行い、これが米国の国内市場を強くして経済を活性化させた。また39年から始まった戦争経済も、米国に繁栄をもたらした。

米国の戦争経済はそれ以来ずっと、今も続いている。しかし繁栄は、1980年代に始まったレーガン政権による改悪によって終わった。レーガン(そしてサッチャー)が行った改悪とは、規制緩和と民営化、自由貿易である。ルーズベルト
大統領が作った労働者を保護する規制を取り払い、国民を犠牲にして資本家は利益を増やした。民営化によって、社会のインフラはそれらを買収した投資家や大企業の手に渡り、公共サービスが犠牲となった。自由貿易で企業は自国の労働者を捨て、低賃金の労働者を使える海外へ生産拠点を移していった。

このような状況の中で米国は、2008年から量的緩和と低金利政策を推進した。低金利で大量のお金が市場に提供されたが、それは労働者の賃金としてではなく、株や不動産などの金融投機へ回った。非正規雇用の増加で国民生活が苦しくなる中、株価や企業経営者のボーナスは上がったが、投資家の所得が増えても消費が増えることはなかった。なぜなら裕福な人の所得増加分は消費へは行かず、貯蓄や投資に回される。こうして米国経済はさらに弱体化した。

今、中国は保有していた米国債を処分し始めている。中国政府の立場からすれば当然で、自国のバブルが崩壊したなら、米国債を処分すれば国内の資産価格に打撃を与えず資金が手に入るベストな方法だからだ。日本政府ができなかったことを中国は行ったのだ。しかしこれは米国の金利上昇を招き、米国経済にさらに悪影響を及ぼす可能性がある。

日本政府は宗主国に倣い、規制緩和、民営化、量的緩和、低金利政策、と同じ道をたどってきた。世界で最も多く米国債を保有している国は日本である。米国株の暴落で日本の株が大暴落すれば、そこに投じられた年金資金も消滅するだろう。政府やメディアはこれらをすべて中国経済のせいにするかもしれない。しかし真の原因は米国自身に他ならない。