No. 1168 米ロの対立激化

日本の大手メディアが報道しないニュースの一つに、アメリカとロシアの対立が激化していることがある。

ドイツのシュタインマイヤー外務大臣は、独ビルド紙に、アメリカとロシア間の緊張は冷戦時代よりも悪くなっていると寄稿した。2013年のウクライナ危機、昨年からのシリア紛争への介入から、ロシア国境周辺に展開する北大西洋条約機構(NATO)軍に加え、今年5月にはアメリカが地上配備型イージス・システムを配備した。これをロシアが脅威とみないはずはなく、核弾頭の搭載が可能なミサイルをクリミアに配備することも辞さないと脅し、核兵器による挑発が始まっているという。

イギリスの情報機関M16で長官を務めたジョン・ソワーズも、冷戦期よりも危険な時代に入ったと語ったと英インディペンデント紙は報じ、ロシアと中国がこれまで以上に軍事力を強めたために力のバランスが変わったということを欧米諸国は認識する必要があると述べたという。

アメリカとソ連がかつて冷戦期に核戦争を始めそうになったことを考えると、これらの警告を真剣に受け止める必要がある。1962年10月、キューバのソ連軍がアメリカの偵察機をミサイルで撃墜し、そのパイロットが死亡した。ケネディ大統領はキューバを軍事攻撃すると決定し、核戦争は不可避に見えた。ソ連の攻撃を避けるために大都市から非難したアメリカ人もいた。しかしソ連の外交官がロバート・ケネディ司法長官と会談し、司法長官はソ連がキューバからミサイルを撤去すればアメリカ政府は封鎖をやめ、キューバを攻撃しないと保証し、またアメリカも数カ月以内にトルコに配備したミサイルを解体すると伝えて、その要求を受け入れたソ連もミサイルの撤去を決め、核戦争を免れることができたのである。

アメリカのウィリアム・ペリー元国防長官は、ロシアが欧米に対し核兵器の使用をちらつかせていることが、冷戦期よりも核の脅威を深刻にしている原因だとロシアを非難しているし、ほとんどの欧米の大手メディアもロシアが世界の脅威だと言わんばかりに報じている。しかしロシア側からすればNATOの東方拡大こそが脅威なのだ。ロシアや中国がメキシコやカリブ海に軍事基地を造ったとしたら、アメリカがどのような行動をとるかは明らかだが、一方のアメリカは巨額のコストをかけて世界各地に軍事基地を有している。これはアメリカ帝国主義の推進のためであり、日本の米軍基地は日本を守るためではなく兵たん補給基地なのである。

アメリカは10月初め、ネバダ砂漠でダミーの弾頭を使った原爆B61シリーズの新型爆弾の実験を行い、成功したと発表した。第1次、第2次世界大戦がささいな事件で勃発したように、第3次世界大戦も小さな軍事衝突から始まる可能性は高い。メディアが報じないとしても、アメリカとロシアがいつ戦争を始めてもおかしくない状況にあることだけは頭に入れておいたほうがいいだろう。