No. 1203 ネットショッピングの脅威

2017年の総務省「家計消費状況調査結果」によると、消費の流通経路の変化により日本の2人以上の世帯において、ネットショッピングを利用する世帯の割合は2002年に5.3%だったのが、2016年には27.8%に増え、利用したネットショッピングの月間支出総額は1世帯当たり3万678円だったという。

調べてみると2016年の全国百貨店売上高は5兆9780億円と、ピークだった1991年(9兆7130億円)から25年間で4割近く売り上げ規模が縮小していた。大規模店舗の売り上げの伸び悩みは数年前から言われてきたが、その原因としては消費税が8%に引き上げられたことに加え、スマホやパソコンからのネットショッピングの増加があることは間違いない。

大手家電量販店などでは、消費者がネットでより安価な製品を探すスタイルへとシフトしたため、買い物自体が減っている上に店舗の売り上げをネットが奪っているという状況になっている。これが特に顕著なのが米国で、オンラインで買い物をする人が増えることで小売業の雇用が激減する脅威にさらされている。

ネットショッピングは流通経路に革命を起こし、人々は本、家電、日用品から衣料品まで、店舗に行かずオンラインで購入するようになった。米ネット通販業界の専門誌「インターネットリテイラー」によると、米国のオンライン購買の半数はアマゾン経由であるという。アマゾンが独り勝ちし、一方でメイシーズ百貨店は1万人以上、アパレルのリミテッドでは4千人以上の従業員が職を失ったという。ショッピングモールではシアーズやKマートといった大型店舗を含め閉店が相次ぎ、過去2年間に小売業界でレイオフされた人数は12万5千人にも上る。

さらに今後アマゾンは、食料品の配達やレストランの料理を宅配するサービスにも力を入れる予定だという。米国ではあらゆる業界がアマゾンの脅威にさらされている。すぐにレストランがなくなることはないが、百貨店やショッピングセンターの家具、家電、衣料品、スポーツ製品、書店といった店舗の閉店はこれからも続くだろう。

かつて米企業が製造拠点を中国に移転し、1999年から2011年までの間で米製造業は100万人近い雇用が失われ、非製造業も加えると全米の雇用喪失は200万人を超すと言われた。もしアマゾンが成長を続け、食料品や薬品、そして配送までも自社がドローン(小型無人飛行機)で行うようになれば、それ以上の雇用を奪うことになる。

今年初め、アマゾンは米国内で物流センターを増設し10万人超の雇用を創出し、2016年に18万人だった米国内の正規社員を28万人に拡大すると発表した。しかしアマゾンが雇用を創出すればするほど既存の雇用が失われ、国全体として失業者が増えるという結果になるだろう。

数年前、オックスフォード大学の教授が、人工知能の発展に伴って10年後になくなる仕事について論文を発表して話題になった。なくなる仕事にはレジ係や小売営業員という職種があったが、人工知能とアマゾンによって、もはやすでにそれらの職種は絶滅の危機にあるようだ。