No. 1207 平和なアジアの一員に

昨年11月、ベトナムで中国の習国家主席と会談した安倍首相は、日中平和友好条約締結40周年の今年、相互訪問を実現することを提案した。

そして12月半ば、安倍首相が掲げる対外政策「自由で開かれたインド太平洋戦略」を、中国主導の「一帯一路」構想と連携させる形で推進する意向を固めたと共同通信が報じた。2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化したことから緊張状態にあった日本と中国だが、その関係は今、近年まれに見る友好路線にある。

日中の友好関係はアジア太平洋地域の平和と繁栄にも大きな影響を及ぼす。もちろん日本経済にとっても重要で、日本の最大の輸出国はアメリカで全体の20%を占めるが、中国は17.7%、香港を合わせると22.9%とアメリカを上回る。日本の輸出の53%はアジアなのである。輸入に至っては中国が25.8%と最大の相手国である。これほど経済的にも重要な国との関係を軽視することこそ問われるべき問題だ。

日本が中国を対等であるかのように行動し始めたのはアメリカの庇護のもと経済成長を遂げてからである。米軍による激しい空爆や原爆投下で壊滅的な打撃を被った日本は、戦後、経済面でも安全保障の面でもアメリカ一辺倒の政策を追求し続け、その結果、東アジアで孤立を深めたのだ。

北朝鮮の核の脅威に関してもロシアや中国、韓国が対話路線をとる中で、日米だけが圧力をかけることを主張している。日本は1952年のサンフランシスコ講和条約の発効で正式にアメリカから独立したものの、日米安保条約により、その後もアメリカに政治や安全保障で従属し続けてきた。平和憲法がありながら日本が再軍備をしたのも朝鮮戦争時代にアメリカから要請があったからだということはよく知られている。

日本は中国に対する政策と認識を大きく変える必要がある。中国の国土は日本の25倍、人口は10倍で、古くは卑弥呼、聖徳太子の時代からさまざまなことを日本は中国から学んできた。今、中国経済は日本の2倍以上に成長し、軍事力においても日本が太刀打ちできる相手ではなくなった。さらに重要なことは、この格差は今後ますます大きくなるということだ。

古代から近世まで元寇を除き日本が中国から攻められたことはなかった。25倍以上の国土を持つ国が、海の向こうの小さな島国を侵略し支配する必要はなかったのだ。しかし日本は先の大戦で15年にわたり中国を侵略した。中国の死者は1千万人を超えるとされる。七三一部隊や毒ガス兵器などの残虐な行為を繰り返し、中国だけでなく東南アジア各地を支配下に置こうとしたのが日本だったのである。

日本がすべきことは、戦争での残虐行為を否定したり隣国に圧力をかけることをやめ、過去を反省し、戦争を二度と起こすことのないよう平和な東アジアの一員となることなのだ。そしてアジアにおける中国の大きな存在を認識し、受け入れる。アメリカにとってこれは不都合なシナリオだが、今年こそ日本はアメリカの支配から抜け出しアジアの一員として平和の道を歩み始めるべきだ。