No. 1249 「費用プラス50」実行すれば

3月初め、トランプ政権が日本、ドイツ、韓国など米軍基地のある同盟諸国に対して、駐留費の全額負担に加えて駐留費の50%を上乗せして払う「費用プラス50」の政策を出してきた。

これは驚くに値しない。トランプ氏は大統領選挙の時から日本などの同盟国は米軍の駐留経費を100%負担すべきだと主張し、在日米軍の撤退の可能性も示唆していたからだ。トランプ氏は米国の不法移民の取り締まり強化と強制送還を公約に掲げ、メキシコとの国境に壁を建設するという当初はばかげたように見えた公約も着々と実行に移しつつある。日本や韓国に駐留費を負担させるという案は米国民へのリップサービスともとれるが、日本が韓国や北朝鮮、中国と友好関係を築いて東アジアが平和になれば米軍の存在理由はなくなる。

東アジアの情勢はこれまでになく安定に向かっている。ベトナムで開かれたトランプ大統領と金委員長との会談は決裂したが、過去にも両国は朝鮮戦争後の停戦合意には調印したが平和条約は結ばれておらず、トランプ政権になるまで米国にとって北朝鮮は憎悪の対象だったのだからそう簡単にいかなくて当然である。

1945年、終戦とともに日本の植民地だった朝鮮半島は米国とソ連によって分割され、北はソ連、南は米国に直接的に統治され、3年後、南は米国の支援で韓国が、ソ連統治地域には社会主義国である北朝鮮が誕生した。そして1950年、もともと一つの国であったにもかかわらず政治体制が異なる両国の間で起きたのが朝鮮戦争だった。

韓国は米国の後ろ盾で、北朝鮮は直接介入を避けたソ連の代わりに中国が支援を行い、泥沼の戦闘が続いた。1953年に休戦協定が成立したが実質的な終戦には至らず、トランプ大統領になってようやく平和協定締結に向けて動きだしたのである。

ロシアと日本も第2次大戦で始まった戦争を正式に終結するための平和条約を結ぶ話し合いを始めた。北朝鮮と米国、ロシアと日本。この話し合いはアジア太平洋地域の平和と安全保障という点で関連している。それを両方とも邪魔しているのが米国なのだ。

日本とロシアの問題は千島列島の支配権である。1956年、日本はソ連と平和条約の交渉をし、そこで歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すという共同宣言をした。しかしここで米国が、2島返還でソ連と平和条約を結んだら米国は永久に沖縄を返還しないと、当時のダレス国務長官を通じて日本をどう喝したのである。

沖縄は1972年に日本に返還されたが、現在でも知事が米軍基地拡大に反対しているにもかかわらず基地は強化され、県民が反対しているのに名護市辺野古への移設が進んでいる。このままではロシアが千島列島を日本に引き渡せば米軍が占領し、そこにイージスミサイルを配備する可能性もある。「費用プラス50」が実行されて日本がその通り支払えば、日本は米国の軍事占領が続く国として東アジアの平和と安定を米国と共に脅かし続けるのである。