No. 1259 ロシアと中国の関係

進展の見られない日本とロシアの平和交渉だが、ロシアと中国は国交を樹立して70年になる。

中国とロシアは長い国境をはさんだ隣国であり、過去には領有権を巡る軍事衝突なども起きたが、両国には社会主義国という共通点がある。中国は米国の一極支配構造をけん制する狙いが、またロシアは世界の安定だけでなく国内経済のためにも中国との経済協力を含めた関係強化を必要としている。

中国の習近平国家主席は6月初め、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、互いを信頼できるパートナーと呼び合い、会談後には両国のさらなる包括的・戦略的協力パートナーシップの発展宣言を行った。世界の戦略的安定性を共同で維持するという表明は、米国トランプ大統領の一国主義、保護主義に対する意向ともとれる。

中国とロシアを抑えることで米国は世界のリーダーであり続けようとしているが、もはや米国にその力はない。G20大阪サミットで貿易交渉の再開に合意し、中国からの輸入品に対する追加関税を見送ったのも当然だろう。携帯電話や電子部品、ディスカウント小売店で販売される日用品などが25%値上がりすれば、困るのは米国企業や消費者なのだ。

中国は米国債の保有を減らしており、一方で準備資産における金の保有量を増やしている。中国の経常収支が減少しているため米国債を買う余裕がないという見方もあるが、制裁を受けて無理に米国債を買う必要がないのは当然だろう。またロシアも外貨準備に占めるドル資産を大きく減らして金に振り替えている。

また中国が昨年から始めた人民元建て原油先物の取引はすでにアジアで指標となっている。日本のタンカーに対する攻撃に始まりイランによる米軍の無人偵察機撃墜など米国とイランの緊張が高まっているが、ドイツ、フランス、イギリスなどはイランとの貿易取引を行うための国際決済メカニズムとしてINSTEXを創設するなど、米国のシステムから離れようとする動きは世界中で加速しているのだ。

中国が米国から主に輸入しているのは大豆、トウモロコシ、小麦などの食料で、大豆に至っては3割が米国からの輸入である。それらに高い関税がかかることは中国国内の食品の値上がりにつながるため、不足分をロシアからの輸入に振り替えることを検討している中国企業もあるという。大量の大豆を中国が輸入するためにロシアに投資をして大豆生産から大豆油の製造までも行う計画もあり、中国とロシアの物理的な距離とトップ同士の関係を考えれば、大豆だけでなく、その他さまざまなものに投資しロシアでの生産を増やしていくことだろう。

ロシアにとって中国との貿易は昨年25%増加し、最大の貿易相手国である。悪化する米中関係、米ロ関係をみれば、米国への対抗軸として共通の利害関係を持つ中国とロシアがこれまで以上に関係を緊密にするのは自然な流れなのだ。