No. 1280 反政府抗議運動に支援者

今年も1月にスイスの非営利財団「世界経済フォーラム」の年次総会が開かれ、政財界リーダーたちが開催地ダボスに集まった。

昨年に続き環境問題が話題の中心となり、「持続可能性」がテーマとなったダボス会議では、家畜が温室効果ガス排出の原因となることから肉食をやめてビーガン(完全菜食)を働き掛ける一方で、多くの富裕層はプライベートジェットでダボス入りをし、また世界最大の石油消費者であり温室効果ガス生産者である米軍についての言及もなされなかった。

米国が戦争をやめれば温暖化阻止に役立つばかりか、予算を環境問題に移転することもできる。しかし政府に強い影響力をもつ軍需産業とそれを支援する金融業界がこの話題に触れることはないのだろう。

17歳になったグレタ・トゥンベリさんは今年も、大人たちが何も行動していないと怒りをぶつけたが、彼女の活動を助ける発表をしたのが米国の投資家ジョージ・ソロス氏だった。トランプ大統領と習近平主席を強く批判するスピーチを行い、そうした独裁者による支配や気候変動に立ち向かうために、10億ドル(約1100億円)を投じて大学間連携プロジェクトを立ち上げるという。

以前からソロス氏は、「オープンソサエティ財団」などの非営利団体を通して「アラブの春」はじめ世界中で反政府抗議運動を支援してきた。グレタさんの活動も、ソロス氏の影響下にある環境組織や活動家が支援しているという指摘は以前からなされていた。世界各地で起きている抵抗運動には、必ずそれを組織し、資金を提供するバックがついている。

一例が香港の民主化運動である。ノルウェーで毎年「オスロ・フリーダム・フォーラム」(OFF)というイベントが開かれている。主催はヒューマン・ライツ財団という米国の非営利団体で、米国の“民主主義”や“人権”を世界に広めるためのさまざまなイベントを行っている。その一つとして、抗議活動をいかに組織し成功させるか、つまりいかにして政府を倒すかを教えているというのである。

英BBCニュースは、香港で行われた民主化運動の学生たちがOFFで訓練を受け、中国政府を倒すための抗議デモのやり方、警察への対処の仕方などを学んだとして、「革命の学校」と報じている。人権や民主主義という言葉を聞いてそれを否定する人はいないだろうが、そのバナーのもとOFFが行っているのは、米国が敵とみなす国家の「反体制派」を育て、資金と訓練を提供することなのだ。

ソロス氏は1990年代、母国ハンガリーに大学を作り、東欧諸国をNATOにくら替えさせるなど東欧の「民主化」を強力に推し進めてきた。しかし大量の移民受け入れ政策を推進し、政権転覆を生じさせるような活動を行うソロス氏が資金提供する団体は大学を含めすべて2018年にハンガリーから追放された。今ソロス氏は新たなプロジェクトでさらに幅広く政権転覆や革命を支援するという。その結果もたらされる通貨の崩壊や企業価値の下落は、彼のような投資家にとってまさに好機なのだ。