No. 1294 内乱の様相の米国

新型コロナと警官の手による黒人の死から、米国は内乱の様相を呈している。

昨年、香港で民主化デモ隊が大学を占拠した時、メディアはそれを大きく取り上げて報道したが、6月に米国ワシントン州で抗議者たちがバリケードを張り、キャピトルヒル自治区(CHAZ)またはキャピトルヒル組織的抗議(CHOP)と自称してシアトルの6ブロックのゾーンを占領していたことはどの程度報じられただろうか。

抗議者は警察の解体と米国からの独立主権を要求し、平和的なデモだとしながらも一部の抗議者は武装していた。トランプ大統領は彼らをテロリスト、無政府主義者と呼び、極左の民主党員が支援しているとツイートした。7月になってシアトル市長が行政命令を出して人々を一掃したが、全米に広がった抗議デモや暴動では1万人以上が拘留され、多くの死者も出た。

警察や州兵の動員により略奪や破壊行為は沈静化しつつある中で、トランプ大統領は暴動をあおっているのはアンティファ(ANTIFA)という極左の反ファシスト組織だと主張し、一方、米連邦捜査局はそれを根拠がないとして否定したが、いずれにしても法治国家の大統領が「法と秩序」をツイッターで連呼しなければならないほど異常事態の中にあるのが米国だ。そしてこの状態は11月の大統領選挙まで続くだろう。

抗議デモ参加者の多くは、人種差別と警察の残虐行為と戦っていると信じているのだろうが、この抗議運動が全米で偶発的に起きたものだとは考えにくい。むしろ、21世紀になってから世界各地で政権交代を求めて起きたカラー革命に近いと言える。

またウクライナやチュニジアで起きたカラー革命と同様、ソーシャル・メディアが大きな役割を果たしている。フロイド氏が白人警官に膝で首を抑えられる「映像」が流れなければ、彼の死はこれまでに数多く起きた警官による黒人の殺害事件と同様、あっという間に忘れ去られていただろう。そして諸外国のカラー革命をCIAが裏で支援していたように、米国でもトランプ政権を倒したい人々が抗議デモを利用して社会を混乱させ国家機能の妨害を図っている。目的は米国を人種問題で分断し、トランプ大統領の再選を阻むことなのだ。

抗議デモだけでなく米国のコロナ感染者は累積で300万人を超え、全世界の25%以上を占めるという悲惨な状況の中、トランプ大統領は反トランプ派と11月まで戦うのが微妙なほど孤立している。ほとんどの民主党員はトランプ氏の再選を望まず、一方の共和党員はバイデン氏が大統領になることを認めていないことを考えると米国である種のクーデターが起きる可能性も排除できない。

米国で暮らす人々にとって2020年は危険で困難な年となり、また米国の影響力を考えると日本や世界にもその波紋が広がることは間違いないだろう。