No. 1308 国民を押さえつける欧米

2020年は新型コロナで世界が一変した。第2波、第3波が襲来といわれるヨーロッパでは、ドイツ、イタリア、スペインなど多くの都市で政府の封鎖措置に対して激しい抗議デモも起きている。

夜間外出禁止、外食や集会の禁止といった政府の命令により、地元の小規模企業や飲食店などの経営が成り立たなくなっている上に、抗議デモの参加者の中には政府が新型コロナのまん延を誇張しているという、いわゆる「陰謀」だと言う人々も数多くいるという。新型コロナがSARSやMERSのような致死率の高い伝染病でないことは明らかである。スウェーデンのように封鎖もマスク推奨もしなかった都市も、外出を禁じた国々と感染者数のカーブはほとんど変わらないし、日本のように「GO TO トラベル」を延長して国民に移動を推奨したりオリンピック開催をうたったりしている国もあるからだ。

そんな中でドイツ通信社は10月、NATO加盟国に対して、ドイツはコロナ感染の第2波が来た場合に緊急対応としてドイツ連邦軍兵士を派兵できるようになったと報じた。NATO加盟国がコロナ感染で医療崩壊などが起きた場合に支援を提供するということかもしれないが、それだけではなく、コロナ感染による封鎖で国民が抗議デモを行えば、地元政府を支援してデモ隊に対処するということもあり得る。

特に締め付けの厳しいフランスでは、長引く都市封鎖により人々の不満が高まっている。マスクをしないと罰金に加え、抗議デモに対する警察官の暴力が増える中で警察官を撮影すると罰金または禁錮刑という法案をマクロン政権は打ち出した。中国やロシアが抗議デモに軍隊を派遣したり国民に対する警察権力を強化したりすれば、欧米の民主国家はそれを独裁主義だと非難しただろうが、自由の国フランスでもマスクと外出証明書を持ち歩かないと罰せられるのである。

民主主義とは私たちのことは私たちが決めるという自由な体制のはずで、多数派または一部の人々が物事を決め、それに異を唱える少数派が罰を科せられる制度ではないはずだ。為政者は国民に自由に意見を表明できる機会を与え、その意見形成のために国民は情報を得られることが重要であり、異なる意見があれば議論をすることも欠かせないはずである。しかし民主主義国家だという欧米では、コロナ感染が広まって以降、情報は操作され、反対者を力ずくで押さえつける行為がまん延している。

ロシアでは12月5日からロシア製のコロナワクチンの大規模接種が始まった。接種は任意でロシア国民は無料で受けられる。日本政府も米国「モデルナ」「ファイザー」、イギリス「アストラゼネカ」のワクチンを確保したというが、ワクチンで重篤な健康被害が出ても製薬会社は賠償責任を免除されるという。米国ではワクチンを打てば1500ドルの給付金がもらえるという提案が出るほど国民にワクチンを打たせたいようだが、ロシアでさえ強制していない副作用の可能性のあるワクチンを民主主義の国で強制接種されるようにならないことを願うしかない。