No. 1473 Bilderberg Does China

Bilderberg Does China

by Pepe Escobar

迫り来るウイルスのように人目を忍んで、第68回ビルダーバーグ会議{1}が現在ワシントンDCで開催中である。ここで見るべきものは何もない。”秘密結社”とかいう陰謀論は勘弁してほしい。これはただの従順な ”政治指導者と専門家の多様なグループ”が、おしゃべりと笑いとシャンパンを楽しんでいるだけなのだ。

それでも、開催場所にワシントンDCを選んだことは、焼け落ちたアレキサンドリア図書館の全体像よりも多くを物語っていることに気づかざるを得ない。待ち望んでいたNATO対ロシアの代理戦争の勃発を告げた年に無数のその副次的な影響を論じるのは、ヘンリー・キッシンジャーが”外交”という名の有害な妥協案の必要性を説いて熱狂させた数週間前のダボス会議より、嘘の帝国の首都のほうがずっとふさわしい。

ビルダーバーグ2022の参加者リスト{2}を見るのは楽しい。以下はその一部である。

* ジェームズ・ベーカー、優れた相談役だが今はペンタゴンのネットアセスメント室長に過ぎない。

* ジョゼ・マヌエル・バローゾ、元欧州委員会委員長。後にゴールドマン・サックス・インターナショナル会長という形で巨額の退職金を受け取っている。

* アルバート・ブーラ、ファイザーの大物。

* ウィリアム・バーンズ、CIA長官

* カート・キャンベル、オバマとヒラリーの“アジアへの軸足”を考案した人物で、現在はホワイトハウスのインド太平洋担当調整官。

* マーク・カーニー、元イングランド銀行。グレートリセットの設計者の一人で、現在はブルックフィールド・アセット・マネジメントの副会長。

* ヘンリー・キッシンジャー、エスタブリッシュメントの代弁者(または戦争犯罪人、あなたの好きな呼び名でどうぞ)。

* シャルル・ミシェル、欧州理事会議長。

* ミントン・ベドーズ、エコノミスト誌編集長。この雑誌の今後のカバーストーリーがビルダーバーグのすべての主要な指示を正式に伝えることになるだろう。

* デービッド・ペトレイアス、終わりのない作戦の敗者として知られるKKRグローバル・インスティテュートの会長。

* マーク・ルッテ、オランダのタカ派首相。

* イェンス・ストルテンベルグ、NATOのオウムのトップ、まちがえた、事務総長。

* ジェイク・サリバン、国家安全保障担当補佐官。

この「多様なグループ」のメンバーのイデオロギー的、地政学的な所属については、これ以上詳しく説明する必要はないだろう。彼らが議論する内容を見ればもっとおもしろくなる。

取り上げられた問題は、「NATOの課題」、「インド太平洋の再調整」、「政府と経済の継続性」(陰謀論者:核戦争時の継続性?)、「世界金融システムの分裂」(すでに始まっている)、「ポスト・パンデミック・ヘルス」(陰謀論者:次のパンデミックをどう仕掛けるか?)、「貿易と脱グローバリズム」、そしてもちろん、選べる和牛ステーキ:ロシアと中国だ。

ビルダーバーグはチャタムハウス・ルールに従っているため、彼らが実際に何を「提案」し、「承認」したのか、一般人は知る由もないだろう。参加者は誰一人としてそのことについて話すことは許されない。ニューヨークの有力な情報源の一人で世界の支配者のほとんどに直接アクセスできる人物は、ダボス会議とビルダーバーグはメッセンジャーボーイのためのものだと冗談を言う。本当にショーを運営する人々はわざわざ姿を現すこともなく、超個人的なクラブで超個人的な会議をしている。そこで本当の決断が下されるのだ。

それでも、「ルールに基づく国際秩序」の腐敗した状態をある程度詳細に追っている人なら、2022年のビルダーバーグでなされたおしゃべりについて、かなり見当がつくだろう。

中国の言い分

米国務長官リトル・ブリンケンは、現在進行中の衝突試験のダミー政権『Dumb and Dumber(ジム・キャリー主演の映画)リメイク版』ではサリバンの相棒で、最近、中国はウクライナで中立を保つ代わりにロシアを「支持」していると主張した。

ここで本当に重要なのは、リトル・ブリンケンが暗に北京はアジア太平洋を不安定にしたがっていると言ったことで、これはばかげたことである。しかしこれこそ米国が「インド太平洋」を作り上げる道筋をつけるためのマスターシナリオなのだ。そしてそれをサリバンとカート・キャンベルは「多様なグループ」に対してブリーフィングするであろう。

ダボス会議の自己宣伝のためのスローガンである「グレートな物語」では完全にロシアを除外している。ビルダーバーグは中国の封じ込めが主な目的であり、結局のところ、嘘の帝国とその属国にとって中国が一番の脅威なのだ。

『エコノミスト』誌が伝えるビルダーバーグの情報を待つのではなく、事実に基づく中国の知識人が新しい「集団的西側」の手口についてどう考えているかを確認する方がはるかに生産的である。

まず、元世界銀行チーフエコノミストで、現在、北京大学新構造経済研究所所長のLin Yifuと、元中国銀行金融調査統計部長のSheng Songchengから始めよう。

彼らは、中国が5月末までに新型コロナの「ダイナミックゼロコロナ」を達成すれば(実際にそうなった:上海封鎖の終了を参照)、2022年の中国経済の成長率は5.5%になるかもしれないとしている{3}。

彼らは「アジア版NATO」を設立しようとする帝国主義的な試みを否定している。「中国がより高い成長率と開放を続ける限り、欧州やASEAN諸国は米国のデカップリングの策略には参加せず、経済成長と雇用創出を確保するだろう」。

上海国際問題研究所と復旦大学の3人の学者も同じ点に触れている{4}。インド太平洋戦略の経済的支柱となるはずの米国が発表した「インド太平洋経済枠組」は、「ASEANの内部結束と地域自治を弱める」ための面倒な試みに過ぎないというのだ。

Liu Zongyi は特に今、地球上で最大の貿易協定である地域包括的経済連携(RCEP)の開始により、相互に大きく結びついたアジアのサプライチェーンの中心として中国の地位が「強化された」と強調する。

国家発展改革委員会傘下のシンクタンクのチーフエコノミストであるChen Wenglingは、米国が仕掛けた「中国に対する包括的なイデオロギーと技術の戦争」{5}を指摘している。

しかし、「米中経済が密接に結びついているため、熱い戦争には至らない」ことを鋭く強調している。重大なベクトルは、「米国は半導体を含む4つの重要分野を中心にサプライチェーンの強化がまだ実質的に進んでいないことだ。」

Chenは、「中国のエネルギー安全保障」を懸念している。米国の対ロシア制裁に対する「中国の沈黙」、これは「米国の報復を招くかもしれない」。そして重要なのは、「中国がウクライナやEU諸国と進める『一帯一路構想(BRI)』の建設計画がどのような影響を受けるか」である。実際にどうなるかというと、BRIはロシアを横断するシベリア回廊ではなく、イランや西アジアを横断する経済回廊や海上シルクロードを優遇することになるだろう。

中国社会科学院(CASS)出身で、元中央銀行金融政策委員会のメンバーであるYu Yongding次第では頸動脈を狙うだろう。その方法に言及する。

世界金融システムと米ドルは、地政学的な道具として武器化された。外貨準備の凍結という米国の極悪非道な行動は、米国の国際的信用を著しく損ねただけでなく、欧米の支配的な国際金融システムの信用基盤も揺るがした。

彼は、中国の情報機関の間で次のようなコンセンサスが得られていることを表明している。

    米中間の地政学的な対立が起きれば、中国の海外資産、特に膨大な外貨準備が深刻な脅威にさらされることになる。したがって、中国の対外金融資産・負債の構成を早急に調整し、外貨準備のポートフォリオに占める米ドル建て資産の割合を減らす必要がある。

このチェスボードは最悪

米国が世界金融カジノを武器化したことについて、中国社会のほぼすべてのセクターで真剣な議論が展開されている。結論は必然的なものである。米国債はどんな手段を使ってでも早く手放すこと、商品と戦略物資の輸入を増やすこと(したがって、ロシアと中国の戦略的パートナーシップの重要性)、海外資産、特に外貨準備高をしっかりと確保することである。

一方、地球の裏側でビルダーバーグの「多様なグループ」は、とりわけ IMFの騒動(グレートリセット、あるいは「偉大なる物語」を実行するための重要な計画)を強制的に崩壊させた場合に実際に何が起こるのかを話し合っている。

彼らは、ゆっくりと、しかし確実に代替となる資源ベースの通貨/金融システムが出現していることに文字通り驚き始めている。まさに、ユーラシア経済連合(EAEU)が中国の意見を取り入れながら現在議論し、設計しているものである。

資源は豊富だが経済的に貧しい「グローバルサウス」の国々が商品を裏付けとした独自の通貨を発行し、ついにIMFの人質から脱却することができる、反ビルダーバーグ・システムを想像してみてほしい。彼らは皆、ロシアのガスとルーブルの交換実験に細心の注意を払っている。

そして、中国の場合、常に重要なのは、大規模で非常に奥行きの深い産業および市民インフラを支える生産資本があることだ。

ダボス会議とビルダーバーグのメッセンジャーボーイが、グランドチェスボードを見るとき恐怖でいっぱいになるのは当然だ。永遠のフリーランチの時代は終わったのだ。皮肉屋、懐疑論者、新プラトン主義者、道学者たちが喜ぶのは、ダボス会議とビルダーバーグの男たち(と女たち)が、実際に自分らを「ツークツワンク」(チェスにおいて自ら状況が悪化する手を指さざるを得ない状況になること)に追い詰めたということだろう。

着飾っても行くところがない。JPモルガンのジェイミー・ダイモンにいたってはビルダーバーグに参加することさえせず、経済の「ハリケーン」がやってくると言って怯えている。チェスボードをひっくり返したところで何の解決策にもならない。せいぜいタキシード姿のサルマット氏とジルコン氏が超音速のシャンパンを携えて儀礼的に訪れるくらいだろう。

Links:

{1} https://bilderbergmeetings.org/press/press-release/press-release

{2} https://bilderbergmeetings.org/press/press-release/participants

{3} https://readchina.info/en-US/articles/582524134345408617

{4} https://readchina.info/en-US/articles/583715462253117441

{5} https://www.strategic-culture.org/news/2022/06/02/ukrainian-official-behind-western-media-reports-of-russian-atrocities-fired-by-ukrainian-parliament/

https://www.unz.com/pescobar/bilderberg-does-china/