No. 1496 ブリキのカーテンの向こう側

ブリキのカーテンの向こう側
BRICS+  対 NATO/G7

by Pepe Escobar

その昔、ヨーロッパ大陸を分断する「鉄のカーテン」があった。それは当時のソ連が、西側諸国との間に物理的、思想的な境界線を作ろうとしたことにちなんでイギリスの元首相ウィンストン・チャーチルが作った言葉である。西側諸国のほうは、共産主義の広がりと影響力に対して封じ込め政策をとっていた。

現代のテクノ封建主義時代{1}に早送りすると、恐怖と無知に満ちた西側諸国がG7とNATOを通じて作り上げたブリキのカーテンと呼べるものが存在する。本質的にそれはグローバルサウスの統合を封じ込めるためのものである。

G7に対抗するBRICS

この統合の最も最近の重要な例は、先週の北京主催のオンライン・サミットにおけるBRICS+{2}の発表である。これはG7の代替はおろか、「新しいG8」の輪郭を確立することをはるかに超えている。

5か国の歴史的なBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を見ると{3}、東南アジア、中央アジア、西アジア、アフリカ、南米とグローバルサウスの縮図であり、まさにグローバスサウスの中にグローバルが含まれる。

明らかに、北京サミットにおけるロシアのプーチン大統領の明確なメッセージは、G7のプロパガンダとは対照的に実はグローバルサウス全体に向けられたものであった。

* ロシアはエネルギーと肥料を供給する義務を果たす。

* ロシアは穀物の豊作を見込んでおり、世界市場に最大5000万トンを供給する予定である。

* ロシアは、キエフがウクライナの港に機雷を仕込んでも国際水域への穀物船の通行を確保する。

* ウクライナの穀物に関する否定的な状況は、人為的に誇張されている。

* 世界中のインフレの急激な増加はG7諸国の無責任の結果であり、ウクライナにおけるZ作戦によるものではない。

* 世界関係の不均衡は長い間をかけて醸成されてきており、国際法の侵食による必然的な結果である。

代替システム

プーチンは、BRICSが2000年代から深く議論してきた重要なテーマの一つである、国際基軸通貨の設計と導入についても直接言及した{4}。

“ロシアの金融メッセージングシステムがBRICS諸国の銀行との接続を開始する”

「ロシアのMIR決済システムはその存在を広げている。我々はBRICSの通貨バスケットに基づく国際基軸通貨を創設する可能性を探っている」とプーチンは述べた。

これは、Z作戦後のヒステリックな西側制裁、モスクワに課された完全な脱ドル、BRICS諸国間の貿易の増加などを考えると必然的なことである。例えば2030年には地球の石油需要の4分の1が中国とインドに集中し、その主要供給国がロシアになると予想されている。

BRICSの “RIC “は、G7が支配する金融システムから締め出されるリスクを冒すことはできない。綱渡りをしている{5}インドでさえ、その流れに乗り始めている。

誰が「国際社会」を代弁しているのか?

現段階では、BRICSは世界人口の40%、世界経済の25%、世界貿易の18%を占め、世界経済成長への貢献度は50%以上である。すべての指標は上昇傾向にある。

ロシアの銀行VEGのCEOであるSergey Storchakは極めて外交的にこう述べた。「もし今後数年間に新興国の声が聞き届けられないのであれば、並行する地域的なシステム、あるいは世界的なシステムの構築を真剣に考える必要がある。」

「並行する地域システム」は、すでにユーラシア経済連合(EAEU)と中国の間で活発に議論されており、ロシアの統合・マクロ経済担当大臣のセルゲイ・グラズィエフが中心になっている。彼は最近、世界経済主権に関する彼の考えを増幅させる見事なマニフェスト{6}を執筆した。

発展途上国を発展させる

ユーラシア大陸横断の金融面で起こることは、これまであまり知られていなかった中国の開発戦略と並行して進行するだろう。昨年の国連総会で習近平国家主席が発表した「世界開発構想(GDI)」{7}である。

GDIは、ユーラシア大陸とその西半島であるヨーロッパを結ぶ経済回廊からなる包括的戦略、すなわち一帯一路構想(BRI)の支援機構と見なすことができる。

BRICSサミットの一部である「グローバル開発に関するハイレベル対話」{8}において、グローバル・サウスは2015年に設立された組織であるGDIについて少し詳しく学んでいる。

一言で言えば、GDIは、例えば、南の国同士の協力基金、国際開発協会(IDA)、アジア開発基金(ADF)、地球環境ファシリティ(GEF)など、多数の機関への融資を補完して、国際開発協力をターボ化することを目的としている。

優先課題は「貧困削減、食料安全保障、COVID-19対応、ワクチン」、工業化、デジタルインフラなどである。続いてフレンズ・オブ・ザ・GDIグループ が2022年初頭に設立され、すでに50カ国以上が参加している。

BRIとGDIは連動して進めるべきものであり、BRICSサミットでは習近平が、「一部の国は、他国に壁を作り、不自由な制裁を加えることによって、開発アジェンダを政治化し、周辺化させている」と明言している。

そしてまた、持続可能な開発はG7の得意分野ではないし、ましてやNATOの得意分野ではない。

7か国対世界

バイエルン・アルプスのシュロス・エルマウで開催されるG7サミットの最大の目的は、「団結を示す」ことだと公言しており、それは西側諸国(日本を含む)の有力者が団結して、回復不能な破綻状態のウクライナに対する持続的かつ無期限の「支援」をすることである。

それは「プーチン帝国主義との闘い」の一部であり、さらに「飢餓と貧困、健康危機、気候変動との闘い」でもあるとドイツのショルツ首相は連邦議会で述べている。

バイエルンでショルツは、ウクライナのためのマーシャル・プランを推し進めた。2022年末までにキエフとその周辺がちっぽけな残党の国に成り下がるかもしれないことを考えるとおかしな構想である。ショルツが言う、G7が「破滅的な飢饉を防ぐ」ために働きかけるだろうという考え方はばかばかしいほど滑稽である。なぜなら迫り来る飢饉は、G7が押し付けた制裁ヒステリーの直接的結果なのだ。

ベルリンがインド、インドネシア、南アフリカ、セネガルを追加でG7に招待したことは、さらに可笑しさを浮き彫りにしている。

ブリキのカーテンが上がる

欧州委員会(EC)の事実上の指導者であるウルスラ・フォン・デア・ライエン総統の下、バイエルンで「団結」した驚くべき凡人たちの集まりにグローバルなサプライチェーンの崩壊とモスクワが欧州へのガスの流れを減らさざるを得なかった理由について実質的な分析など期待するのは無駄だろう。それをする代わりに彼らはプーチンや習近平を非難したのである。

ブリキのカーテンへようこそ。嘘の帝国が首謀した21世紀のバルト海から黒海に至るインターマリウム(かつてのポーランド=リトアニア共和国構成国の政治家によって何度も提言されてきた地理的計画)の再構築だ。これでポーランドに吸収されたウクライナ西部、バルト三国の小国、ブルガリア、ルーマニア、スロベニア、チェコ、そしてNATO参加を目指すスウェーデンとフィンランドも「ロシアの脅威」から守られることになるだろう。

制御不能のEU

特にイギリスが取るに足らない島国に戻った今、G7の中でドイツ、フランス、イタリアに権力を行使している。

EUの役割はとりわけ指令的である。

毎年60もの「指令」がEUから出されている。これらの指令はEU加盟国の国内法に強制的に移項されなければならない。ほとんどの場合何の議論もなされない。

さらに1万を超えるEUの「裁定」がある。ブリュッセルの欧州委員会(EC)の「専門家」が、すべての政府に対して、経費、収入、(医療、教育、年金に関する)「改革」について、新自由主義の正典そのままの「勧告」を出し、それに従わなければならないのだ。

したがってEU加盟国の選挙はまったく意味がない。マクロン、ショルツ、ドラギといった各国政府のトップは、単なる実行者にすぎない。民主的な議論は一切許されない。「民主主義」は「EUの価値」と同様、煙幕に過ぎないのである。

実際の政府を動かしているのは行政権力間の妥協によって選ばれた多くの役人であり、それは最高に不透明な方法で行われている。

欧州委員会(EC)は完全にコントロールの外にある。そのため、ウルスラ・フォン・デア・ライエンのような驚くほど平凡な人物(以前は現代のドイツで最悪の国防相だった)が、現在のEC総統へと飛躍し、外交、エネルギー、さらには経済政策に口を出すようになったのである。

彼らは何を目指しているのだろう?

西側から見れば、不吉な冷戦2.0のためのブリキのカーテンはメインコースの前の前菜に過ぎない。それは中国のBRIとGDIを封じ込めるために考案されたウクライナ騒ぎの丸写しであり、「インド太平洋」と改名されたアジア太平洋地域で筋金入りの対立をすることである。

カウンタークーデターとして中国外務省が、BRICS(およびBRICS+)と帝国的なAUKUS/Quad/IPEFとの対比を詳細に強調するようになったことは啓蒙的である。

BRICSは事実上の多国間主義であり、グローバル開発の重視、経済回復のための協力、グローバルガバナンスの改善を意味する。

一方、米国が作り上げたこの騒動は冷戦的な性格であり、発展途上国の搾取、中国封じ込めのための団結、独占的な「ルールに基づく国際秩序」を強調する米国第一主義の象徴である。

バイエルン州に集まったG7の指導者たちに、例えばロシアの石油・ガス輸出に価格上限を設けることの不条理さを理解してもらうことは見当違いだろう。仮にそれが実現するならモスクワはG7へのエネルギー供給を完全にカットしても問題はないだろう。そしてもし他の国々がそれから除外されればG7が輸入する石油・ガスの価格は大幅に上昇する。

BRICSが切り開く未来

だから未来が不吉なのも無理はない。ベラルーシ国営テレビの驚くべきインタビュー{9}で、ロシア外相のセルゲイ・ラブロフは、いかに西側は正直な競争を恐れているか、について要約している。

それゆえキャンセル文化の頂点に立ち、「新自由主義的なビジョンと世界の配置に何らかの形で矛盾するものはすべて弾圧する」のである。ラブロフはまたグローバルサウス全体の利益のために今後のロードマップを要約した。

    新しいG8は必要ない。我々はすでに構造を持っている……主にユーラシアに。EAEUは中華人民共和国との統合プロセスを積極的に推進し、中国の「一帯一路構想」とユーラシア統合計画を整合させようとしている。
 南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)のメンバーもこれらの計画に注目している。そのうちのいくつかはEAEUと自由貿易圏協定を結んでいる。上海協力機構(SCO)もまた、こうしたプロセスの一部である…ユーラシアの地理的な境界を越えたもう一つの構造がある。
それはBRICSである。この団体は欧米のビジネススタイルや、国際通貨・金融・貿易制度に関する欧米のルールにはますます頼らなくなってきている。彼らはドルや他の通貨の支配的な役割にどのプロセスも依存しない、より公平な方法を好んでいる。G20はBRICSと、BRICSと同じ立場をとるさらに5カ国を完全に代表しており、G7とその支持者はバリケードの反対側にいる。
    これは重大なバランスである。もし欧米が対立を煽るためにG20を利用するならG20は劣化する可能性がある。私が述べた構造(SCO、BRICS、ASEAN、EAEU、CIS)は合意、相互尊重、利害のバランスに依存するものであり、一極集中の世界現実を受け入れることを要求するのではない。

ブリキのカーテン?むしろ破れたカーテンのようなものだ。

Links:

{1} https://www.aljazeera.com/program/upfront/2021/2/19/yanis-varoufakis-capitalism-has-become-techno

{2} https://www.strategic-culture.org/news/2022/06/22/exile-on-main-street-the-sound-of-the-unipolar-world-fading-away/

{3} https://vk.com/pepeasia?w=wall578617852_20419

{4}https://tass.com/economy/1469873?utm_source=startpage.com&utm_medium=referral&utm_campaign=startpage.com&utm_referrer=startpage.com

{5} https://www.youtube.com/watch?v=oRxXjnp5obk

{6} https://russtrat.ru/analytics/16-iyunya-2022-0010-10743

{7} https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/topics_665678/kjgzbdfyyq/202112/t20211210_10466584.html

{8}https://blog.us2.list-manage.com/track/click?u=3ad225a592b2e34cc118f9549&id=a1a30f7f7a&e=ba7a391ffb

{9} https://vk.com/@580896205-we-are-seeing-today-that-the-west-has-declared-a-war-on-the

https://www.unz.com/pescobar/behind-the-tin-curtain-brics-vs-nato-g7/