The US Wars Against Russia and China
そこに経済的ロジックはない
by b
米国の政治家ズビグニュー・ブレジンスキーは、(ネオ)リベラルの核心を持つ強硬派だった。彼は米国の政策に広範な影響力{1}を持っていた:
ブレジンスキーは地政学に基づく1997年に出版された『グランド・チェスボード:アメリカの優位とその地政学的重要性(The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperatives)』の著者であり、この本はマッキンダーのハートランド理論に基づいている。ブレジンスキーは、世界島における単一の大国の台頭を防ぐことができれば、アメリカは世界の覇権を維持できると主張した。
ブレジンスキー・ドクトリンは現在もアメリカの外交政策に大きな影響力を持っている。彼の弟子たち、中でもウクライナ系移民のヴィクトリア・ヌーランド国務次官(政治問題担当)は、米国務省で強力な発言力を持っている。
ブレジンスキーは、ウクライナがなければロシアはアジアのハートランドを支配することができず、アメリカの力に対抗することもできないと主張していた。
しかしヘンリー・キッシンジャーの訪問と中国との大国間戦争の可能性について書かれたペペ・エスコバルの記事{2}で、私はブレジンスキーが後年考えを変えたことを知った:
9.11が起きる以前の1997年に出版された『グランド・チェスボード』は、アメリカはユーラシア大陸で台頭する競争相手を支配すべきだと主張した。ブレジンスキーはロシアと中国の戦略的パートナーシップという、彼の究極の悪夢の現実に遭遇することはなかった。しかしすでに7年前、つまりキエフのマイダンから2年後、少なくとも彼は「グローバル・パワー・アーキテクチャの再編成」が不可欠であることを理解していた{3}。
2016年に『アメリカン・インタレスト』に掲載された長文の中で、ブレジンスキーは確かに大国間の協力を主張した{3}:
建設的なアメリカの政策は長期的なビジョンによって忍耐強く導かれなければならない。それはロシアが(おそらくプーチン後に)、影響力のある世界大国としての場所は最終的にはヨーロッパにしかないということを徐々に認識することを促すような結果を求めなければならない。中東における中国の役割拡大は、成長していく米中の協力関係が中東の危機に対処する中で、広範な世界的な安定を共に形成し向上させるための歴史的に重要な試金石であるという認識を持つべきである。
建設的なビジョンに代わるもの、とりわけ一方的な軍事的・イデオロギー的成果の追求は、長期化し、自滅的な無益をもたらすだけである。アメリカにとって、それは永続的な紛争と疲労、そしておそらくは20世紀前の孤立主義的な撤退をもたらすかもしれない。
アメリカはブレジンスキーの助言に従わなかった。中国に対して経済戦争を仕掛けて中国を疎外し、ロシアの能力を破壊させようとウクライナを対ロシア代理戦争に駆り立てた。その結果ロシアと中国は共通の新たな敵であるアメリカに対してその能力を統合することになったのである。このような状況下で、ブレジンスキーが予言したアメリカの結末が明らかになるかどうかは今後数年の間にわかるだろう。
キッシンジャーとブレジンスキーという古くからのライバルであり政敵が、人生の後半になって同じ結論に達したことは興味深い。
スティーブン・ローチは、キッシンジャーの訪中について次のように述べている{4}:
数年来、キッシンジャーは米中関係の憂慮すべき状況に大きな懸念を表明してきた。遡ること2019年末、彼は米中がすでに「新たな冷戦の麓」にあると警告した。その後4年間の紛争激化の軌跡を考えると、彼の懸念には新たな緊急性がある。今週の李尚福との会談の中国側の要約ではキッシンジャーはこう述べたとされている。{6}「米国も中国も、相手を敵対視する余裕はない。もし両国が戦争になれば、両国民にとって意味のある結果にはつながらないだろう」
アメリカの超党派の対中経済戦争政策への反対は、今やアメリカ経済の大物たちからも出てきている{7}:
米国の大手チップメーカーのリーダーたちは今週、バイデン政権に対し、政権は対中輸出規制の影響を調査し、新たな規制を実施する前に一旦立ち止まるべきだと述べたという。
月曜日にワシントンで行われた会議では、インテル社のパット・ゲルシンガー、エヌビディア社のジェンセン・フアン、クアルコム社のクリスティアーノ・アモンが、輸出規制は業界における米国のリーダーシップを傷つける危険性があると警告した。バイデンの関係者はプレゼンに耳を傾けたが、確約はしなかったと、この非公開で行われた会談の参加者は身分を明かさない条件で述べた。
経済論理からすれば、ロシアや中国との衝突を避けた方がアメリカ(やヨーロッパ)の経済は良くなる。しかし、マイケル・ハドソンが説明するように{8}、これは今や国家安全保障の優先順位{8}によって上書きされ、驚くべき結果をもたらしている:
ロシアと中国を孤立させ、アメリカの経済支配に依存させる代わりに、アメリカの一極外交は、自国とその衛星であるNATOを世界の他の地域から孤立させている。グローバル・マジョリティは成長しているが、NATO経済は脱工業化への道を進んでいるのだ。驚くべきことは、NATOがロシアや中国との貿易の「リスク」を警告する一方で、産業としての存続可能性と経済的主権を米国に奪われることをリスクとは考えていないことだ。
これは「歴史の経済的解釈」が予想していたことではない。政府は自国の経済をリードする企業の利益をサポートすべきものだと考えられている。そこで私たちは、経済的要因が世界貿易、投資、外交の形を決定するのかという疑問に立ち戻ることになる。バルト三国やソビエト崩壊後のウクライナのように、急速に人口が減少し、非工業化が進むような、脱経済化したNATO経済圏を作ることは本当に可能なのだろうか。
これは実に奇妙な「国家安全保障」である。経済に関して言えば、米国と欧州が自国を世界から自ら孤立させるという戦略的な誤りはあまりにも大きく、全体におよび、その影響は世界大戦に匹敵する。
問題は、なぜアメリカはブレジンスキーやキッシンジャーの忠告に従わず、自国に害をなすようなことをしているのかということだ。イヴ・スミスがハドソンの著書の序文で述べているように、これは非常に奇妙な光景である:
米国が中国に対してエスカレートしている奇妙な光景に関するマイケル・ハドソンの最新作のサブテーマのひとつは、西側諸国が自国の利益のために動いていないことへの困惑である。ランバートもこの難問を考えてきた。
おそらく、彼らは自分たちのプロパガンダを本当に信じているのだろう。そして、米欧圏の軍事的・経済的影響力は、相対的に見れば、世界の他の国々を押しのけるほど大きなものではないことをまだ認識していないのだろう。しかし、インドや南アフリカなど多くの国々に圧力をかけ、ウクライナでのロシアの行動をアメリカ側に立って非難させるという彼らの努力が失敗に終わり、そして今、優れていたはずのアメリカとNATOの戦争マシンがあまりうまく機能していないことで、彼らの自己欺瞞にひびが入り始めていると思うだろう。
もう一つの可能性は、いわゆる「制度の鉄則」である。個人や利害関係者が、制度への影響をほとんど、あるいはまったく気にせず、自分たちの立場を最大化するために動いているということだ。
私は、このゲームの主役であるバイデン、ブリンケン、サリバン、そして彼らの超党派支持者たちは、世界の現実を希望的観測で片付け、あるいは置き換えてしまった盲目的なイデオロギーによって動かされているという結論に達した。
対ロシア制裁の失敗は現実の世界が彼らの信じる世界とはまったく違うことを証明したはずだ。しかし、彼らは今、中国に対して同様の戦争を仕掛けることで、過ちを繰り返そうとしている。
それは彼らが率いるべき人々にとって良い結末にはならないだろう。
Links:
{1} 建設的なビジョンに代わるもの、特に一方的な軍事的・イデオロギー的な結果の追求は、長期化し、自滅的な無益をもたらすだけである。
{2} https://sputnikglobe.com/20230721/pepe-escobar-neocons-want-war-with-china-1112033985.html
{3} https://www.the-american-interest.com/2016/04/17/toward-a-global-realignment/
{4} https://stephenroachauthor.com/henry-kissinger-meets-li-shangfu/
{6} https://www.theguardian.com/world/2023/jul/18/henry-kissinger-meets-china-defence-minister-beijing
{7} https://finance.yahoo.com/news/chip-ceos-urge-us-study-231800506.html