No. 1918 経済成長、G7vs BRICS

Economic Growth in G7 Versus BRICS

リアリティチェック

by Richard D Wolff

イギリスでは1月、BBCが国際通貨基金(IMF)の2023年と2024年の各国の成長予測に関するデータ{1}を作成し、公表した。 BBCが前面に出したのは英国にとって本当に悪いニュースだった。G7(アメリカ、カナダ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、カナダ)、ロシア、中国という9つの主要工業国の中で、イギリスは唯一、実質的な経済衰退に見舞われることになるという。つまり、2023年のGDP(国民が年間に生産する財とサービスの総計)が縮小するのである。保守党による長い政治的支配の夜が明けた後、イギリスはこのような不名誉な結果となったのだ。

その暗い夜の出来事には、2008年から2009年の世界的な資本主義の崩壊の後に続いた緊縮政策、イギリスの経済的な問題をヨーロッパのせいにし、その頂点で行われたブレグジット(EU離脱)、イギリス市民には禁じたコロナ禍でのカクテルパーティをボリス・ジョンソン前首相が楽しんでいたこと、そして、国民に嘘をつき、それがバレてしまったときに果てしなく明らかにわかる恥ずかしい嘘をついたこと、など。しかしBBCの新しいIMFデータに関する報道{1}は、イギリス経済の低調さ以上の衝撃的な内容だった。

IMFによれば、2023年の残りの期間、中国のGDP成長率は5%以上、日本のGDP成長率の倍以上になるという。他のG7諸国はすべてGDP成長率が日本より緩やかになるだろう。中国の成長率は2023年にはアメリカの3倍以上になる。最後に、IMFが予測する2024年のGDP成長率を見るとロシアと中国はG7のどの国よりもはるかに速い成長を示している。これらの比較予測は、ほとんどの政治家の発言、マスメディアの説明、G7の旧資本主義体制からのプロパガンダ(ウクライナ戦争によって悪化した)と衝突するリアリティチェックを構成している。BBCの報道{1}はしたがって、稀有で目を見張るものであった。

30年もの間、中国が自国の経済成長を主張すると、それに対して懐疑的な見方や中傷がなされてきた。北京の主張を否定するこうした試みがその後の中国の優れた経済成長の圧倒的な記録によって誤りであることが証明されると、それでもなおそうした努力は激しさを増した。実際に中国を訪問し、高い工業化率、国内移住と都市化、そして大量消費レベルの急上昇を確認しても、中国の経済成果に対する不信感は強まった。中国が極度の貧困から米国に匹敵する経済大国へと変貌を遂げたことを無視する必要性は、1945年以降、冷戦によってソビエトの経済的業績が認識されなかったことを思い起こさせる。ウクライナ戦争をめぐるG7の対ロ制裁戦略にも、同様の非認識が見られる。今世界経済を覆っている重大な変化を真剣に理解しようとする者にとって、ひとつの疑問が立ちはだかる。古い資本主義の体制が言うこと(そして信じてさえいるかもしれないこと)と実際の状況とのギャップをどう説明するのだろうか?

その答えは、我々は、アメリカ資本主義とその世界帝国(または覇権)の衰退がもたらした、否定と見せかけの組み合わせに直面しているということだ。 こうした衰退は、旧資本主義体制内の観察者にとっては、少なくともつかの間、時折明らかになることがある。例えば、アフガニスタンやイラクのような貧しい国々を相手にしても、米軍が局地的な戦争に「勝つ」ことができなくなったことがそのような瞬間である。もうひとつの例は、新型コロナによる多数の死と病気を管理する米国の医療産業複合体のさえない実績だ。2020年から2021年にかけてのアメリカ資本主義の暴落は深刻で、すぐに悪いインフレが起こり、その後急速に信用が不安定になった。米国政府、企業、家計の負債レベルは記録的か、それに近い水準にある。富と所得の不平等は、すでに極限に達しているが、さらに拡大し続けている。このような事実を目の当たりにした一般市民は、これらの出来事を単独で見るだけでなく、何かもっと大きな問題が起きているのではないかと考えるのも無理はないだろう。もしかしたら、システム的な問題があるのではないか?

しかし、そのような考えが、答えを真剣に追求するどころか、意識的な疑問にまで発展する前に、否定が始まる。システムの崩壊は耐え難いことなので、システム的な否定が行われる。具体的な問題についての発言は、衰退する資本主義システムという文脈と結びつけるのを省略するように注意深く作られる。システム的な次元の回避は、それぞれの特定の問題や危機がもたらす危険を過小評価することにつながる。バラ色のメガネのように、反システム的なメガネは、経済問題を実際よりも危険性が低く、狭く、影響も限定的に見せる。反システム的なバイアスは一種の否定である。

例えば、ジャネット・イエレン財務長官やその他の高官が、米国経済の不平等が深まっていると嘆いていることを考えてみよう。彼らは衰退する資本主義の中で、富裕層や権力者がその地位を利用して、衰退のコストを他者に転嫁することに反論しないし、想像すらできないようだ。例えば、1971年にニクソン元大統領が行ったような賃金・物価の凍結や1940年代にフランクリン・ルーズベルト元大統領が行ったような商品の配給制度の代わりに、彼らは最近インフレに対抗するために金利を引き上げた。それが彼らの選択した反インフレ政策である。この選択肢の負担は富裕層よりも中低所得者に重くのしかかる。巨額の連邦財政赤字は、社会の富裕層から不釣り合いな借金をする(つまり富裕層により多くの利子を支払う)ことで賄われるため、同様のコスト・シフトが生じる。しかし、こうした政策選択と財政赤字に関するG7の主流派の議論は、米国資本主義の衰退とその世界的覇権と結びつけることはほとんどない。

G7諸国の経済におけるシステム的な問題の否定を補完するのは、他の国の問題とは対照的に、G7経済が健全であるかのように見せかけていることである。例えば、米国経済が「すばらしい」という繰り返し肯定することは、ロシアや中国経済を苦しめている深刻な困難と対比される。皮肉なことに、こうした困難は「独裁的」あるいは社会主義的な経済システムの「性質」に由来する、システム的なものとして扱われるのが常である。例えば、近年、米国の主要メディアは、ロシアのルーブルは間もなく「崩壊」する、中国の建築ブームは崩壊しつつある、中国の反コロナ政策が経済を破壊している、などと報じた。ロシア経済については故ジョン・マケイン米上院議員が{2}、ロシアを「国を装ったガソリンスタンドだ」と一蹴した。ドナルド・トランプ元大統領やジョー・バイデン大統領の周辺では、(関税、貿易、制裁、香港、台湾などに関する)あらゆる具体的な政策にかかわらず、中国の経済システムの変革が必然的に目前の目標であるという議論がしばしば展開された。

現実はこうした否定や見せかけを台無しにする。それが、彼らが現実を覆い隠そうと必死になる理由の一つなのだ。例えば、過去四半世紀のGDP成長率で世界をリードしてきた中国経済の実績は、その特定の経済システムに対する自信と忠誠心を裏付けている。BBCの図表{1}はその自信をさらに裏付けるものでしかない。同じ論理で、この図{1}は旧G7資本主義体制のシステム的自信に挑戦している。G7の業績と、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に集まる新興の(GDPベースではすでに大きくなっている)代替諸国との間に広がる差に対して、否定や見せかけは持続可能な対応にはなりそうにない。

もちろん、G7もBRICSも共に多様な集合体であり、メンバー間には多くの重要な違いがある。またどちらのブロックも資本主義や社会主義の構成要素を維持したり、その間を移行したりする保証はない。G7とBRICSの関係は、さまざまな形態の資本主義と社会主義の間で起こりうる移行と同様に、現在、重要な社会的問題と闘いである。両ブロック内部の社会運動がこれらの問題と闘いを形成していくだろう。そのためには、特に戦争を回避するためには、社会運動は否定や見せかけを止めて現実を直視する必要がある。

This article was produced by Economy for All {3}, a project of the Independent Media Institute.

Links:

{1} https://www.bbc.com/news/business-64452995

{2} https://www.politico.com/story/2014/03/john-mccain-russia-gas-station-105061

{3} https://independentmediainstitute.org/economy-for-all/

Economic Growth in G7 Versus BRICS: A Reality Check