No. 2232 米国はいかにして犯罪的なグローバル通信監視を合法化しているか

How the US legalizes its criminal glob al surveillance of communications

by Richard Hubert Barton

数年前、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は携帯電話の通信を一切利用していないことを明らかにした。驚くべきことだろうか?

捜索令状がなくても外国人の電話やメールの情報を収集できる「外国情報監視法」(FISA=Foreign Intelligence Surveillance Act)702条

米国のインテリジェンス・コミュニティ(IC)は17の連邦政府機関から構成されている。よく知られているのはCIA、FBI、NSAである。簡単にいうと、CIAの任務は人的情報、FBIはテロ、対外情報活動、スパイ活動を中心に国内で活動し、NSAは電子情報を扱う。

当初、米国議会が702条を制定したのは、1978年に外国情報監視法(FISA)が成立してからの数年間のテクノロジーの進化によるものだった。2000年代半ばまでに多くのテロリストやその他の外国の敵対者が、米国企業が運営する電子メールアカウントを使用するようになった。通信技術がこのように変化したため、政府は海外にいる非米国人の通信を入手するために、正当な理由の認定に基づく個別の裁判所命令を求めなければならなくなった。

これは高くつくことがわかった。

702条に基づく新しい手続き{1}では、司法長官(AG)と国家情報長官(DNI)が外国情報監視裁判所(FISC)に提出するもので、ICが702条を使って収集できる外国情報のカテゴリーを指定する。このような証明書は最長1年間有効であり、毎年再提出しなければならない。AGとDNIはまた、ICが外国のインテリジェンス情報を取得する目的で米国外にいる外国人を標的にするためにのみ、令状なしで第702条を使用することを保証するために設計された規則に従う。

しかし議会は2008年、NSAが議会の監視や承認なしに運営していた既存の監視プログラムを合法化するために第702条を制定した{2}。当時監視プログラムはより狭義に定義されており、少なくとも一部が国内で、政府が既知のテロリストであると考える標的を含む通信を傍受するというものだった。議会は監視をその権限下に置く一方で、サイバー犯罪や麻薬取引から武器の拡散に至るまで、新たな脅威の数を含む監視の範囲を着実に拡大することを助けてきた。

このような一見整然とした合法的な状態が、米国情報機関に長く蔓延していたのだろうか?この記事はその疑問にも答えてくれるだろう。

論理的で説得力がある公式説明

テロとの戦いの例ほど、第702条適用の実際をよく示すものはない。例えば、ハジ・イマンのケースを詳しく見てみよう。

自称「イラク・アル=シャームのイスラム国」(ISIS)の副司令官であるハジ・イマンは、イラク北部に住む非米国籍の人物で、それ以前は高校の教師であり指導者であったが、後にテロリズムに傾倒した。彼のテロ活動によって、米国政府は彼の居場所につながる情報に対して700万ドルを提供することになった。

NSAとそのICパートナーは2014年から2016年まで2年以上を費やしてハジ・イマンを探した。この捜索は、主に702条に基づく諜報活動により最終的に成功した。さらにNSAはハジ・イマンとその側近の活動に関する重要な対外情報を収集し、彼らの動向を追跡し始めた。

2016年3月24日、ハジ・イマンとその仲間2人を逮捕しようとした際、ハジ・イマンの隠れ家から米軍の航空機に向けて発砲があった。米軍は応戦し、その場所でハジ・イマンと他の仲間を殺害した。その後、702条によりハジ・イマンの死亡が確認された。

当時、ハジ・イマンの死亡事件は大々的に報道され、理想主義的な人権活動家たちはハジ・イマンを逮捕して起訴すべきだったと主張したことを覚えている。2011年5月、アルカイダの非武装のオサマ・ビンラディンを射殺した後にも、同様の反論があった。

ICの責任者たちは、702条は米国の安全を守るために不可欠だと主張している。この主張を裏付けるために、彼らはさまざまな例を挙げている。

米国人はいまだに私的通信の乱暴な捜査を受けている

702条に基づいて外国情報を収集する機関の長による年次報告書など、いくつかの管理機関が702条のもとで濫用がないことを保証することになっている。さらに同様の仕事は702条プログラムに関する議会の通達によって行われている。2016年だけでも、政府は702条プログラムに関する500ページを超える報告を議会に提出している。どちらかといえば、702条が適切に適用されるよう多くの優秀な人材が指をくわえて見守っているという印象を受けるかもしれない。

例えば、2014年のプライバシー・自由監視委員会の報告書にはこうある:「政府の702条プログラムは法的制約の中で運営され、貴重な情報を収集し、国家安全保障を守るために適切に管理され、効果的である。」

9.11、フォートフッド、”アンダーウェア・ボマー”、ボストン・マラソン爆破事件などのテロ攻撃を調査していたいくつかの委員会は、702条を支持していただけでなく、すでに合法的にICが保有している情報の利用に対する障壁を取り除くことを提唱していたようであることを強調しておきたい。

テロとの戦いの分析に米国内の私的通信が含まれると、良いイメージが損なわれる。ICは米国人をスパイしていると非難されるからだ。

強調しておくべきことは、9.11の直後に702条は、諜報機関は米国外にいるほとんどすべての非米国人の電話、電子メール、テキストメッセージ、その他の通信を令状なしで収集できるようになったことである。CIAやNSAのような機関は、外国情報監視裁判所(FISC)の重要な目的が監視を管理する一般規則を承認することを保証しなければならないが、個々のターゲットを承認する機能はない。

702条は、令状なしの監視は海外にいる非米国人だけを対象にすることを認めているが、米国人の通信も「不可避的に」捕捉される。なぜなら、人々は海外にいる家族、友人、知人と、通常はテロやスパイ活動とは関係のない話をするからだ。

このことを念頭に置いて、議会は情報機関に対し、702条に基づいて収集された米国人の情報の保持と使用を「最小限に抑える」よう指示した。しかしこの明確な命令にもかかわらず、FBI、CIA、NSAの職員は米国人の私的な電話、テキストメッセージ、電子メールを探すために毎年20万件以上の令状なしの「バックドア」検索を行っている。

この侵害には憂慮すべき悪用も含まれている。米国政府は、議員、ジャーナリスト、議会選挙運動への19,000人の献金者のコミュニケーションに対して根拠のない検索を行った。このような侵害はまだ行われているかもしれない。その上、FBIは「市民騒乱に関連して」「何万件もの」違法な捜査を行っている。ジョージ・フロイド殺害に抗議する141人、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件への関与が疑われる2万人以上が対象となった。

最近では、FBIの悪用を阻止するために手続きを変更したにもかかわらず、FBI捜査官は、警察署長による公民権侵害の疑いをFBIに報告した米上院議員、州上院議員、州裁判所判事の私的通信に対して不適切な捜査を行った。

このような悪用に対して、政治的指向の異なる多くの議員がこの法律の改革を宣言している。702条の重要な改革は米国人の私的通信を調査する前に令状を取得することである。合衆国憲法修正第4条の下では、政府が外国人を監視の対象としている場合に限って、令状なしにこれらの通信を入手することはできないことを理解することが重要である。それにもかかわらず、このような監視の結果として2019年から2022年までにFBIが実施したバックドア捜査は500万件近くにのぼる。

1960年代初め、最高裁は、政府は個人の「書類」を押収するためだけでなく、刑事捜査や国内の国家安全保障捜査において電話を監視するためにも令状が必要だとした。しかし、「外国情報監視」のための裏口捜査に令状が必要かどうかについては、決着がつかなかった。

10年後、議会がその質問に回答した。1976年、チャーチ委員会とパイク委員会による議会の調査によって、FBI、CIA、NSAがソ連の影響という根拠のない主張のもとに、公民権や反戦の擁護者たちを何十年にもわたって違法に監視していたことが明らかになったのだ。FBIはマーティン・ルーサー・キングJr.牧師をスパイし、脅迫しようとした。キング牧師は連邦捜査官によって標的とされた数千人のうちの一人にすぎなかったため、議会は一連の改革を実施し、そのひとつが1978年の外国情報監視法であった。

この法律の下で、政府が米国人のコミュニケーション(外国の標的との通信を含む)を国内で収集しようとする場合、新たに創設された外国情報監視裁判所(FISC)から、刑事令状に似た裁判所命令が必要となった。

この制度はその後22年ほど機能した。しかし2001年9月11日の同時多発テロ事件後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、外国人テロリストと思われる人物の通信を、米国人との通信も含めて収集したかったので、FISCからの承認を待ちたくなかった。だから待たなかった。もちろんそれはFISA違反で、NSAは大規模で令状なしの電子監視プログラムを開始し、大量の米国人の国際通信を収集したのである。このプログラムがニューヨーク・タイムズによって暴露され、初めてブッシュ政権は議会にスパイ活動の立法承認を求めたのだった。

議会の反応は好意的だった。その結果が2008年FISA改正法であり、702条はその重要な構成要素であった。前述の通り、702条は、たとえ米国人と通信している可能性があっても、政府が令状なしに外国人ターゲットの通信を収集することを認めている。しかし議会は、これが外国情報目的で収集された米国人の通信に対して何百万もの令状なしの「裏口」捜査につながるとは(信じられないことに)想定していなかった。

702条が2024年4月19日に失効すると決まったとき、共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、失効の数日前に新法の採決を予定していた。FBIによる702条データへの令状なしのアクセス権の維持に最も影響力をもっていたのは下院情報委員会のマイク・ターナー委員長とジム・ハインズ委員であった。彼らは米国人の通信に対する令状なしのFBI捜査の維持を求めるキャンペーンで僅差で勝利した。バイデン政権も212対212の同数で修正案に反対した。

しかしながら、現在の702条の一部にいくつかの重要な変更がFBIの手続きに導入された。盗聴にアクセスする前に、従業員に「オプトイン」することを義務づけ、データベースのいわゆる「バッチ・クエリー」を行う前に、FBI弁護士の許可を得なければならなくなった。重要なのは、選挙で選ばれた高官、記者、学者、宗教家などの通信は「機微(センシティブ)」に分類され、指揮系統の上位者による承認{2}が必要となったことだ。

702条監視の擁護者はしばしば、盗聴された米国人はテロリストと通信しているとほのめかすが、そのような想定は疑わしい。米政府の公式見解は、どの米国民が監視されているのか、あるいは何人いるのかさえ知ることは不可能であり、702プログラムの主な目的は「外国情報」を入手することであると宣言している。この言葉には、テロや破壊行為だけでなく、政府が「外交問題」を遂行するために必要な情報も含まれている。

アンゲラ・メルケルからオバマへの電話: 私の携帯電話を盗聴しているのですか?

前述のように、ICは702条を利用して対外諜報情報を入手する目的で、米国外にいる外国人を令状なしに標的にしている。

世界中の数え切れないほど多くの普通の人々が、たとえ彼らが悪人でなくとも、ほとんどの場合偶然に、通信を記録され、検索されていると思うかもしれない。ほとんどの場合、彼らは自分の通信が記録されていることにさえ気づいていないかもしれない。しかし、外国の政治家、軍高官、ビジネスマン、科学者の中には、702条を通じて、令状を発行することなく通信内容を調査されている人々がいる。

おそらく最もよく知られているのは、2013年に米国のICがドイツのアンゲラ・メルケル首相の公私にわたる会話を盗聴した電話盗聴スキャンダルだろう。結局のところ、これはテロリストや西側諸国が指定した「権威主義体制」の指導者をスパイするケースではなく、むしろ緊密な同盟国をスパイするケースだった。

ドイツのメディアと政府関係者は激怒した。メルケル政権のハンス=フリードリッヒ内相はビルト・アム・ゾンターク紙にこう語った: 「盗聴は犯罪であり、その責任者は責任を負わなければならない」。

国会でメルケル首相の党首を務めるフォルカー・カウダーは、メルケル首相の携帯電話の盗聴を「重大な背信行為」だとし、米国は「グローバル・パワー」ぶりをやめるべきだと述べた。

ビルト・アム・ゾンタークがさらに報じた内容は、ドイツ国民に衝撃を与えたに違いない。すなわち、同紙によれば、NSAはバラク・オバマ米大統領の主導で、メルケル首相のテキストメッセージや電話の内容を含む監視を強化し、その夏にメルケル首相が手に入れた盗聴防止機能のついたとされる新しい携帯電話の盗聴を開始したという。

興味深いことに、同紙によれば、NSAはメルケル首相の前任者ゲルハルト・シュローダーがジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)のイラク戦争への支持を拒否した後に初めて盗聴を開始し、2005年にメルケル首相が就任した際も継続したという。

それだけでなく、メルケル首相のオフィスから800メートルほど離れたベルリンの米国大使館で働く18人のNSA職員は、調査結果をNSA本部ではなく、ホワイトハウスに直接送っていた。

このスパイ・スキャンダルを受けて、ベルリンは前例のない動きとして米国大使を召還した。

ドイツ誌シュピーゲルは、米国は2002年からメルケル首相の電話をスパイしており、オバマ大統領は2010年にこの作戦について知らされていたが、止めなかったと報じた。

これとは対照的に、NSAはオバマ大統領がスパイ行為を知っていたことを否定した。

オバマ大統領は、メルケル首相から電話があったとき(オバマがメルケルにかけたのではない)、偽善的に謝罪し、そのことを知っていたら盗聴を止めただろうと言った。米国の大統領は自分の国をコントロールできているのだろうか?

米国の監視をめぐる軋轢が最初に表面化したのは{3}、2013年の初め、ワシントンがEUのオフィスに盗聴器を仕掛け、ドイツ国内の電話、電子メール、テキストメッセージを通常月に5億件も盗聴していたという驚くべき報告だった。抜け目のない政治観察者だけでなく、普通の思考を持つ欧米人でもこう思うだろう:どうして米国の保証や米国の民主主義を信用できるのだろうか?

入手可能な情報によれば 2013年10月、ICが世界の指導者35人の電話を監視していたことがわかっている。彼らの電話番号を提供したのは米国政府関係者からだった。ガーディアン紙は、NSAの内部告発者エドワード・スノーデンがリークした文書を引用し、ホワイトハウス、国務省、国防総省の職員が、外国の政治家の連絡先をNSAと共有するよう促されていたと付け加えた。

一方、ル・モンド紙は、NSAが2012年12月から2013年1月にかけて数万件のフランスの電話記録を収集したと報じた。

盗聴の可能性を心配していなかった唯一の指導者はジュリア・ギラード元オーストラリア首相{4}だった。なぜなら彼女はかなり愚かで、ナイーブにも常に米国を称賛していたからだ。

なぜ米国のICはテロを事実上容認しているのだろうか?

米国のICが国家元首を含む外国人市民をスパイしていること、そして令状なしの諜報活動によって米国民をスパイしていることは明白である。世界的な通信の大規模な浸透を考えれば、米当局がテロリストの通信を敏感に察知しているのはもっともなことだ。そうでないはずがない。実際、米司法省がテロリストの通信を傍受・検索できるだけでなく、その一部であることは想像に難くない。

そのような状況下で、米情報機関とイスラム教スンニ派武装組織ISISの間でコミュニケーションがなかったと想像できる人がいるだろうか?むしろ、リビアとシリアで政権運営を追求する米国がそのようなコミュニケーションを激しくしていたに違いないと考えるのが妥当である。これは別の疑問につながる: なぜ西側メディアはそのような活動を報道しなかったのか?その答えは明白なようだ。米国のICはテロリストとの戦いを自慢するだけでなく、テロリストへの協力や支援を効果的に隠す方法も知っているのだ。

まともな感覚の持ち主であれば、テロリストが人権侵害を平気で行っている他の場所でも、米国情報機関の調査を広げるだろう。これは特に、ドンバス、クリミア、ベルゴロド地方で民間人を意図的に標的にした大虐殺を行っているウクライナのナチスにあてはまる。

さらに、NATO加盟国はウクライナのナチスを監視し、コミュニケーションに参加し、武器に関する指示を与え、民間人を標的にするよう調整している。このような人道に対する犯罪について西側諸国が何も公表していないことに驚く人がいるだろうか?しかもドイツの現首相オラフ・ショルツのような政治家たちは、そのような大量虐殺を真っ向から否定し{5}、ウクライナがドンバス地方で大量虐殺を行ったというプーチンの主張を否定している。もちろん、真実を語るより嘘をつく方が簡単なのだ。

Links:

{1} https://www.dni.gov/files/icotr/Section702-Basics-Infographic.pdf

{2} https://www.wired.com/story/fbi-section-702-us-person-queries-email/

{3} https://www.abc.net.au/news/2013-10-28/claims-obama-was-aware-of-merkel-phone-tapping/5048718

{4} https://www.abc.net.au/news/2013-10-25/angela-merkel-obama-nsa-spying-spies-espionage/5044760

{5} https://www.reuters.com/world/europe/scholzs-dismissal-alleged-genocide-donbass-unacceptable-russia-says-2022-02-19/

https://strategic-culture.su/news/2024/07/23/how-us-legalizes-its-criminal-global-surveillance-of-communications//news/2024/07/23/how-us-legalizes-its-criminal-global-surveillance-of-communications/