No. 2705 エスカレーションで優位に立つ

Achieving Escalation Dominance

中国単独で米国の経済・技術的脅迫に抵抗する方法:一方によいことは、もう一方にもよい

by Hua Bin

先週、オーストラリアの属国総督アンソニー・アルバニーズはワシントンの帝国宮廷へ赴き、トランプ王に「画期的な合意」という形で貢ぎ物を捧げた。内容はオーストラリアのレアアース鉱床を米国と共同採掘するというものだ。その目的は中国によるこれらの重要鉱物の支配を打破することにある。

トランプは相変わらずの愚かさで、即座にこう宣言した。「約1年後には、重要鉱物とレアアースが山ほど手に入る。どう処理すればいいか分からなくなるだろう」と。

トランプの豆粒ほどの脳みその中では、「取引の成立」と「技術開発」が混同されているようである。単に取引を発表しただけで、なぜか自動的に工場や労働者、製品が生まれると信じているのだ。

現実世界はそのようにはなっていない。

トランプ王の宮廷で誰が技術顧問を務めているかは知らないが、明らかに非技術的な『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『ワシントン・ポスト』を読める者なら誰でもレアアース鉱床へのアクセス権を得たからといって、北京のレアアース輸出制限を克服できるわけではないと説明できるだろう。

結局のところ、レアアース鉱石で精密誘導ミサイルは作れないのだ。

トランプの妄想的な楽観主義は、北京の官僚が「中国は世界最大のシリコン生産国だから米国の半導体禁輸を克服した」と宣言するのと同類だ(実際、中国は世界最大のシリコン生産国である)。

レアアース鉱床とレアアース合金や磁石は別物だ。シリコンとシリコンチップが別物であるのと同様である。

未加工の鉱物を「ハイテクのビタミン」と呼ばれる実用的な工業製品に変えるには、高度な加工と精製が必要である。

米国とその従属国は、シリコンをシリコンチップに変える多くの重要技術を掌握している。例えばチップ設計ソフト、製造装置、ファウンドリなどだ。

同様に中国は、レアアース供給チェーンにおける採掘、抽出、分離、化学浸出、精製、合金化、磁石生産に関わる重要技術を掌握している。

レアアースの加工・精製はまた、放射性副産物や化学廃棄物により環境への危険性が極めて高い。中国は廃棄物処理技術を有する唯一の国である。

この産業は資本とエネルギー集約型であり、専用機械、特殊化学溶剤、分離・加工施設への巨額な先行投資、膨大な電力消費、高度な専門技術が必要だが、これら全ては中国政府によって管理されている。

中国のみが全17種のレアアース元素、特にテルビウム、ジスプロシウム、イットリウムなど11種の中・重レアアース元素を精製・加工する能力を持っている。重レアアース合金と磁石は、ジェット推進、レーダー、レーザー、センサー、ドローン、指向性エネルギー兵器などの先進軍事システムに不可欠である。

中国の重レアアース元素(HRRE)の世界市場シェアは98%から100%である。また、最大のHRRE埋蔵量を保有しており、その大部分は江西省に集中している。

中国のレアアース製品輸出管理は、原料から合金・磁石まで完全に及んでいる。さらに加工技術、機械設備、技術人材も対象となる。例えば、中国国民が海外のレアアースプロジェクトに従事することは現在禁止されている。

さらに輸出管理は域外適用される。中国政府は、世界のどこで製造されたものであれ、中国のレアアースを含む製品や関連知的財産(IP)を使用した製品が、軍事用途または半導体エンドユーザー向けに輸出される場合、北京の承認を得なければならないと要求している。軍事用途のエンドユーザー向け輸出申請は、原則として拒否される。

中国政府の広範なレアアース輸出管理は、米国が中国への半導体技術アクセスを遮断するために用いた手法をもとにしている。

米国は「外国直接製品規則(FDPR)」を適用し、ASMLやTSMCなど、米国の技術を利用するグローバルサプライヤーが中国へ半導体や製造装置を販売できないようにした。

米国人は中国の半導体設計・製造企業で働くことも禁じられた。2022年には、米国パスポートやグリーンカードを持つ多数の幹部や技術専門家がファーウェイ、SMIC、YMTCから強制退去された。

チップ禁輸措置は、中国の技術進歩を妨げることを目的としており、北京は現在、米国とその従属国の軍事および半導体の進展を阻止するために独自の制約を講じている。

トランプがアルバニーズと発表したレアアース取引に戻ろう。この協定はオーストラリアのレアアース採掘・生産への80億ドルの共同投資を伴う。

しかし技術ノウハウと人材プールがなければ、せいぜい3~5年後、あるいはそれ以上先になって軽レアアース製品の限定的な生産能力が得られるのが精一杯である。

1年後、トランプは依然として習近平主席に土下座してレアアース合金と磁石を懇願しなければならない。

米国防総省は既に、国内レアアース生産プロジェクトに資金を提供している。対象企業はレアアース採掘会社のMPマテリアルズで、同社は技術を持っていなかったので中国に鉱石の加工を委託していた。

他のプロジェクトには、オーストラリアのレアアース採掘企業ライナス・マイニングが含まれる。同社は垂直統合型サプライチェーンを運営する唯一の非中国系生産者として有名だ。

しかし、非中国系レアアース生産プロジェクトは、いずれも自社の生産計画上、今後5年間で現在の中国生産量の5%以上を生産できない。それも全てが計画通り進み、数百億ドルが投資されるという前提での話だ。

興味深いことに、年間売上高が数千億ドル規模の半導体市場とは異なり、レアアース市場のドル換算価値は実際にはごくわずかだ。鉱業調査会社の推計によれば、2024年の世界市場規模は40億~50億ドルに過ぎない。

中国が自国生産量の60%を消費していることを考慮すると、中国以外の地域における年間総需要額は20億ドル未満である。中国の年間輸出総額3.5兆ドルに占めるレアアース輸出の割合は0.01%未満だ。

先進兵器システムでレアアースに大きく依存する米国防総省でさえ、年間調達費の0.1%未満しかレアアース製品に使っていない。

この状況が中国に圧倒的な優位性をもたらしている。商業企業が巨額投資で既存技術を再現する経済的コストと便益の分析は、まったく理にかなっていないのだ。

例えば米豪共同プロジェクトの80億ドル投資を例に取ろう。全てが計画通り進み、合弁企業が5年後に世界市場の10%シェアを獲得できると仮定しよう。

2030年までの需要成長予測が年率8~12%に留まるため、その10%シェアによる収益は2030年時点で10億ドル未満である。

さらにこの合弁事業が50%の純利益率(中国主要メーカーを大幅に上回る)を達成すると仮定しても、純利益は5億ドル未満である。

利益追求型の商業企業が、5年後の5億ドルの収益可能性のために、今日80億ドルを投資するだろうか?これは技術的問題や予算超過がなく、利益率が保証されるという計画通りの展開を前提としている。環境浄化に必要な数十億ドルすら加味されていない。

対照的に、中国は2020年代初頭、年間4000億ドル超の半導体チップを輸入していた。米国の輸出禁止措置は、世界最大のチップ市場を中国国内メーカーに銀の皿にのせて差し出したに等しい。

中国政府が半導体技術に投資するには数千億ドルが必要だが、見返りも同様に膨大なのだ。

レアアース投資の非対称的なリスクとリターンに対し、半導体は対称的なリスク・リターン構造を持つ。このため中国は、西側がレアアースで抱える問題よりも、自国の半導体支配を打破するインセンティブがはるかに強い。

これがエスカレーションの優位性である。中国は米国のあらゆる動きに対応し、さらに賭け金を上げられるのだ。

多くの人がトランプをTACO[“Trump Always Chickens Out”(「トランプはいつもビビッて退く」)と呼ぶ者は多い。だがトランプのためにもいうが、彼をTACOに追い込める国は中国だけだ。

トランプがEUやインドを締め上げた時、両者は不満を表明し形だけの抵抗を見せたが、結局は屈服し膝を折った。EUは不平等な貿易協定を飲み込み、インドは50%の関税回避のためロシア産原油購入を断念すると約束した。

トランプは特に鋭い指導者ではないが、弱者への強要や腕ひしぎの技は心得ている。そして大抵は自分の思い通りにする。

唯一の例外が中国だ。北京は怒りの発言だけではない。いじめっ子に反撃を加えた。トランプが中国にTACOするのは、習近平がより強く、トランプは強さに屈するからだ。

中国政府は米国のあらゆる敵対的な貿易・技術攻撃に報復してきた:

– 米国の「エンティティリスト」に対抗し「信頼できない企業リスト」を発表

– 米国の半導体輸出禁止措置への報復としてレアアース輸出規制を実施

– 米国のジェットエンジン・コンピュータソフトウェアへの脅威への報復としてリチウムイオン電池・黒鉛負極材の輸出規制を実施

– 米船籍・米運航船舶への港湾使用料導入(中国海運・造船業界への米措置への完全な対抗措置)

– 米関税への報復として大豆・トウモロコシ・牛肉から原油・LNGに至る米国農産物・エネルギー製品の購入停止

– 中国企業に対する米国301条調査への対応としてQualcommとNvidiaへの独占禁止法調査開始

– 米国が金融戦争をほのめかす中、米国債の売却も進めている

中国はこれら全てを優位な立場から実行している。2025年1~9月期の中国経済成長率は5.2%だった。対米輸出が27%減少したにもかかわらず、総輸出は8%増加した。中国株式市場は年初来34%上昇し、米国の2倍の伸びを示している。

現在、米国向け輸出は中国総輸出の10%に満たない。北京がワシントンに求めるものはほとんどない。

中国は今年、1兆ドル超の貿易黒字を生み出す見込みだ。3.3兆ドル超の世界最大の外貨準備を保有し、最大の金準備国でもある。米国は38兆ドルの債務を抱えている。

北京は貿易戦争において、まだ多くの経済的手段を温存している:

– 医薬品産業における主要原料(KSM)の世界シェア60~80%

– 有効成分(API)の世界シェア40~60%

– ジェネリック医薬品の世界シェア80%、抗生物質では90%超の支配力

– グラファイト、コバルト、アルミニウム、銅、リチウム、人工ダイヤモンドに至る多様な重要鉱物における主導的シェア

– 数多くの産業・製品カテゴリーにおける主導的地位

中国の強みは、現代生活に不可欠な重要製品のグローバルサプライチェーンにおける役割に築かれている。

トランプとその取り巻きは、米国が最大の消費国であるゆえに世界に条件を押し付けられると信じている。

しかし、物資を持つ国が紙幣を持つ国と戦争をすれば、どちらが勝つかは明らかだろう。

下流の人間は上流の人間の意のままに生きる。これは単純で直感的な真理だが、どういうわけかトランプはそれを理解できないようだ。

歴史家が米中貿易・技術戦争を振り返るとき、アメリカのフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの哀れな事例を思い出すだろう。彼女はライバルの足を折るよう誰かを雇って勝利を企てた。

結局、彼女はプロスケートから永久追放され、金メダルも剥奪された。

彼女と同じアメリカ人たちは、再び自分たちが敵視する国家に対して同じ卑劣な手を使おうとしている。その結果は同じ反動を招くことになるだろう。彼らが得るものは青あざと鼻血だけだ。

https://huabinoliver.substack.com/p/achieving-escalation-dominance-how