No. 2957 中国の輸出規制:日本にとって災難、トランプ一族にとっては恩恵

China’s export curbs: a disaster for Japan, a boon for the Trump family

Inside China Business

中国から日本へのタングステンやレアアース金属の輸出は崩壊し、あるメタルは取引がゼロになった。日本のメーカーはスクラップを買い漁り、新たなリサイクル能力の拡充に巨額の投資を行っている。軍事関連企業に対する中国の輸出禁止措置は日本の製造業に深刻な影響を与えている。トランプ政権とペンタゴンも、トランプ一族が一部所有するカザフスタンの鉱山を含む新たな採掘プロジェクトに数十億を投資している。

ペルシャ湾とウクライナでの戦争により弾薬の備蓄が急速になくなっている。それらを補充するためのサプライチェーンはすべて「グローバル・サウス」諸国を経由しているが、これらの国々は武器メーカーへの輸出を停止している。

これは機器の製造に同じ原材料を必要とする民間メーカーにとって大きな問題となっている。

タングステンは幅広い軍民両用用途を持つ、そうした金属の一つだ。中国は世界のタングステン生産の大部分を占め、外国の軍隊で使用される材料に対して非常に厳しい輸出規制を設けている。米国の武器メーカーだけでなく、世界中のメーカーが対象である。中国から日本へのタングステン輸出は昨年比で急減し、今年の第1四半期には日本への新規輸出はゼロになった。

日本の製造業は深刻な影響を受けている。タングステンの価格は高騰しており、三菱マテリアルは一部の切削工具や設備の価格を3倍に引き上げた住友電気工業も価格を引き上げている。タングステンは中国が独占し、軍事請負業者への輸出を制限している数あるレアアースの一つだ。

急成長しているのはタングステンのリサイクル産業で、三菱と住友は欧州や日本でリサイクル能力を構築するために巨額の投資を行っている。しかしこの巨大企業の2社が自社用にタングステンの新たな供給源を確保できたとしても、中小メーカーは苦境に立たされるだろう。

中国がレアアースの新たな輸出禁止措置を発表した直後、日本企業の輸入は激減した。3月と4月、中国から日本への輸出は80%以上減少した。ジスプロシウムとテルビウムの年間輸入量はゼロとなり、イットリウムの輸入量は90%以上減少した。イットリウムは医療機器やレーザー切断、半導体製造に使用される。しかし、イットリウムは先進的な兵器システムにおいても不可欠だ。海軍が使用する艦載レーダーシステム、精密誘導弾、軍用ジェット機やミサイルの耐熱コーティングなどがそれにあたる。

中国はこれらの材料の日本への主要供給元である一方、日本は逆に、それらの材料を含む部品や機器の米国への主要供給元となっている。だからトランプ政権は、中国から日本へのこれらの輸出の再開を要請した。「ワシントンは、日本のハイテク製品の世界的な供給が減少していることを懸念しており」、高官級会合において中国に対し、それらの製品のサプライチェーンへの悪影響を回避するよう求めたのだ。

日本はMRIスキャナーその他の診断機器の主要生産国で、日本企業が中国から材料を調達できなければ、米国向けにそれらを製造できないというのが米国の考えだ。しかし中国企業も同様の機器を製造しており、米国の病院は単に中国から購入すればよいというのが中国側の考えである。

これは米国地質調査所(USGS)のデータだ。2015年以降、米国内のタングステン生産量はゼロである。世界的に見ると、タングステン採掘の80%を中国が占めており、日本もタングステンの生産国ではない。世界の上位5つの生産国は、中国とその近隣諸国で中国の友好国でもある。

日本には鉱山がないため、入手できる場所からスクラップの輸入を強化している。 これは米国のタングステンスクラップ輸出のグラフであり、その多くが日本向けだ:

中東での戦争により世界の需要が急増しており、電子機器や半導体、兵器、切削工具を製造する企業はどこもタングステンを必要としている。

中国は多くの買い手への供給を遮断しているため、スクラップ市場は活況を呈している。これは三菱マテリアルグループのプレスリリースで、世界中の企業に対し、スクラップを三菱に売却するよう呼びかける取り組みの一環だ。投入コストの高騰を理由に自社製品の価格を引き上げた三菱の同じ部門であることを忘れてはならない。

しかし、三菱の真の問題は、同社の他の部門が大量の軍需品を製造している点にある。

今年2月、三菱を含む20社の日本企業に対し中国産レアアースの輸入が具体的に制限された。これらの企業は、艦船、航空機、レーダー、ミサイルの生産に深く関わっている。中国語での発表はこちら:

2月24日から、中国企業からこれらの企業へのデュアルユース品の輸出は禁止されている。そして、そのリストの上位5社はすべて三菱の事業部門である。日本は再軍備を進めており、防衛費を倍増させている。リストに掲載された企業への輸出を行う中国企業は、デュアルユース品、つまり金属やその他の部品について、その都度個別のライセンスを申請し、それらの企業に送られるものが「日本の軍事力強化に寄与しない」という保証を提供しなければならない。

そしてこの基準を満たすことはほぼ不可能である。材料が中国の管轄外に出た後、買い手は何でもでき、誰にでも販売できるからだ。したがって軍事目的が考えられるあらゆる物品について、中国企業からこれらの日本企業への輸出を厳しく禁止しているのである。

そして、それがすべての人の問題になる。欧州や中東で何かが爆発するたびに、ペンタゴンの防衛関連企業は、さらなる兵器を製造するために必要な材料を求めて世界中を探し回る。それがこれらすべての金属に関する問題なのだ。中国とその近隣諸国がタングステンのサプライチェーンを掌握している一方で、民間メーカーと防衛関連メーカーは同じ資源を巡って争っている:

この問題に対する短期的な解決策はなく、長期的には、欧米企業にとっての唯一の活路は、自国または友好国でこれらの金属を採掘・精製することだ。

カザフスタンは米国よりも中国とはるかに友好的な関係にあるが、カザフスタンがいつの日かトランプ一族の収益源となり、ペンタゴンのサプライチェーンの拠点になるだろうという楽観的な見方が広がっている。エリック・トランプとドナルド・ジュニアは、現在コーブ・カズ・キャピタルが所有するカザフスタンの鉱山事業と合併する予定の企業に投資しており、コーブ・カズは新たなタングステンプロジェクトの開発のために、連邦政府から16億ドルの新規融資を獲得したばかりだ。

コーブ・カズはまた、戦争省に4億ドルの資金提供を要請している。新たな鉱山プロジェクトを稼働させるには数年を要し、それはペンタゴンやイスラエル国防軍(IDF)向けの利用可能な資材を生産するプロセスにおける第一歩に過ぎない。そして、三菱やレイセオンを助けるために、タングステンがカザフスタンから出荷されるようになるずっと前にトランプは退陣し、ホワイトハウスは新たな政権下に入っているだろう、もしそんな日が来たらの話だが。とはいえ、今、多額の資金が動いている。

 参考資料とリンク:

規制強化により、中国から日本へのタングステン輸出が半減https://asia.nikkei.com/business/materials/china-tungsten-exports-to-japan-halve-amid-tightened-controls

「今が我々の時代」:中国の輸出規制を追い風に、ベトナムのタングステン企業が好調https://asia.nikkei.com/business/markets/commodities/our-time-is-now-vietnam-tungsten-firm-rides-high-on-chinese-export-curbs

中国から日本へのレアアース輸出が80%減、企業は対応に追われるhttps://asia.nikkei.com/business/materials/china-s-rare-earth-exports-to-japan-drop-80-sending-companies-scrambling

米国、中国に対し日本へのレアアース輸出再開を要請https://asia.nikkei.com/politics/international-relations/japan-china-tensions/us-asks-china-to-resume-rare-earth-exports-to-japan

中国の輸出規制を受け、米国から日本へのタングステンスクラップ輸出が急増https://asia.nikkei.com/spotlight/supply-chain/us-tungsten-scrap-exports-to-japan-soar-on-chinese-curbs

米国地質調査所(USGS)、タングステンhttps://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2026/mcs2026-tungsten.pdf

特集:可能性を秘めた素材を世界へ届ける ― TUNGSTEN Vol.3 https://withmaterials.mmc.co.jp/en/233

中国との供給関係に亀裂が生じる中、日本企業がタングステン不足に対処https://www.marketscreener.com/news/japanese-companies-tackle-tungsten-shortage-amid-rift-with-supplier-china-ce7f5dd2da8dfe27

中国、タングステン、そしてイラン紛争をはるかに超えて続く戦争に不可欠な金属の供給ショック https://www.cnbc.com/2026/06/03/china-metals-national-security-defense-weapons-supply-tungsten.html

中国、「再軍備化」を抑制するため日本の20団体に輸出規制を課すhttps://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-adds-20-japanese-entities-export-control-list-2026-02-24/

三菱マテリアル、中国での供給逼迫を受け炭化タングステン価格を引き上げへhttps://asia.nikkei.com/business/companies/mitsubishi-materials-to-lift-tungsten-carbide-prices-on-tight-china-supply

重要鉱物協力の深化に伴い、米国・カザフスタンのタングステン合弁事業が進展https://timesca.com/u-s-kazakhstan-tungsten-venture-advances-as-critical-minerals-cooperation-deepens/

中国によるタングステンの新たな輸出禁止措置が防衛関連企業に衝撃を与える中、米国防総省は新たな供給源の確保を急ぐhttps://www.youtube.com/watch?v=ivdsyNvFq_8

https://www.youtube.com/watch?v=8KmJN1BdAhQ