No. 1095 誰のための国家運営か

11月17日に政府が発表した7~9月期のGDPの速報値は、前期比実質0.4%減、年率換算1.6%減と、2期連続で経済成長率はマイナスとなった。

アベノミクスがこのような結果をもたらすであろうことを、私はこれまでも予告してきた。なぜなら日本経済の70%は国内消費で成り立っているからだ。GDPは個人や企業が国内で消費したモノやサービスの金額の総計で、消費税が8%に増税されたことで日本人の大部分にあたる中流層や低所得層の消費が減退することは目に見えていた。

1980年代には毎年10%の経済成長率を誇っていた日本が、89年に3%の消費税を導入したことで成長率が4%に減退した。97年、消費税が5%になって以降、マイナス成長となり現在まで景気停滞は続いている。回復を真に願うなら、なぜ経済を落ち込ませた消費税の撤回を検討しないのだろう。

その一方で政府は所得税の最高税率を20%減税し、89年には40%だった法人税も2012年には25.5%に引き下げるなど富裕層や大企業の税負担を軽減してきた。忘れてはならないのは、アベノミクスで上向いた景気が再び低迷したわけではなく、20年以上続く低金利政策も、アベノミクスの超金融緩和策も、株価を上昇させ、資金量が増えたことで円安を進めただけで、消費や生産など現実の経済活動である実体経済を押し上げることはできなかったということだ。

国民の大部分は働いて所得を得ている勤労者である。不安な雇用や上がらない賃金の上に消費税増税では、消費を増やしたくても増やせるはずはない。そして消費者がモノを買わなければ、企業の設備投資も増えることはないのである。金融制度や株式市場に公的資金を投じても経済は救えない。それは日本の失われた過去20年をみれば十分わかるはずだ。その間、政府がとり続けた超金融緩和策が成し遂げたのは、富を持たない者から持てる者へ移動したにすぎない。

ここにきて、政府は国民の厚生年金と国民年金資産までも株式市場に投じる計画だという。これまで国債で運用していたのを、株式市場で運用するのだ。株はバクチと同じで、株価が上がれば高い収益が見込めるが、暴落すれば損失が膨らむ。国民の年金がなくなることすらあるだろう。運用を行うのも、14社のうち10社がゴールドマン・サックスなどの外資系企業だという。巨額資金を運用するのだから受け取る手数料は年間数億円規模となるだろう。

一般国民から富を取り上げても大企業、富裕層、多国籍企業を救うことは基本的に不可能なのだ。経済を活性化させるには、国の勤労者である一般国民に仕事と十分な賃金を提供し、お金を使わせることである。それは共産主義でも社会主義でもなく、ただ経済とはそうやって動くものだということだ。

日本は今、誰のために国家運営がなされているのか。それを考えて次の選挙で誰に票を投じるかを考えるとよい。選挙へも行かず、または何も考えずに同じ政治家に国を任せていれば、十数年後に年金が消えたとしても、それは自業自得としかいいようがない。