No. 1788 中国とブラジルが先導して米国の海外での経済力を削ぎ落とす

China, Brazil Lead in Chipping Away at US Economic Power Abroad

by W T Whitney

米国は200年前にモンロー・ドクトリンを宣言し、以来ラテンアメリカとカリブ海の問題を米国に有利なように調整してきた。それにもかかわらず国や地域の独立を求める闘いは続き、貧しい人々や疎外された階層は抵抗した。やがて先住民族の運動、労働者の動員、進歩的で社会主義的な傾向のある政府が誕生することになる。キューバの革命政権は63年間続いている。

米国の政治的な支配力は弱まったかもしれないが、この地域の経済に対する米国の支配力は依然として強い。第二次世界大戦後、それは世界中に拡大した。それに今、亀裂が入りつつある。特に世界経済の支配的通貨としての米ドルの役割は、もはや限界にきているのかもしれない。

1944年、44の連合国が自国の通貨の価値を金の価値ではなく米ドルの価値に相関させることを決定した。それ以来、各国は基軸通貨として、また対外貿易や銀行取引において米ドルに依存してきた。

それなりのよい理由があったのだろう。米国は商品の生産と販売において優れていたため、おそらくドルの価値は安定し、予測可能と思われた。ドルは銀行家やトレーダーが容易に入手でき、その評価も明確であった。また各国は負債を抱えるようになった米国が売却した債券の形で蓄積したドルによって、自国の通貨準備を整えることができた。

米国はその恩恵を受けてきた。ドルが絡む通貨交換において、米国の企業や個人が経験する追加コストはわずかだった。米国の輸入業者はドル高が進めば進むほど、海外で購入する製品の価格が下がることを知っている。米国の借入コストが海外で比較的低いのは、米国債とそのドル建て投資が、さまざまな理由で海外で魅力的だからである。

ドルの優位性は海外に痛みをもたらした。ドルの為替価値が下がると米国に輸出する企業は打撃を受ける。ドル高になれば、米国製品の輸入業者が打撃を受ける。

最も重要なことは、米国政府が国際取引でドルを使用している敵国を罰する機会を得たことである。対象国の海外取引にドルを使用しないよう求める経済制裁を行うのである。米財務省は、それに従わない外国の銀行や企業に罰則を与える。これまで、キューバ、イラン、北朝鮮、シリア、ベネズエラ、ニカラグア、そして最近では中国とロシアが制裁対象国となっている。

米国政府が頻繁に経済制裁を行うことが、新しい国際通貨システムを求める新たな動きに大きく貢献した。イラン、ベネズエラ、アフガニスタンが米国や欧州の銀行に預けていた外貨準備高が没収されたこともまた変革を求める声を高めた。

3月29日、中国とブラジルは自国通貨を使用した貿易を行うと発表した。ブラジルの最大の貿易相手国は中国である。ブラジルの通貨準備高は現在、中国の人民元が大きな割合を占めている。

2023年初めには、ブラジルとアルゼンチンが自国通貨の共通化に向けて協力することを提案した。ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領は、1月の中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)会合で、「私が決められるなら、私はこの地域の単一通貨を推進する」と発言した。彼はそれを「SUR」(南)と呼んだ。ALBA地域同盟は2009年、ドル依存度を下げることを目的に「Sucre(スクレ)」と呼ばれる電子通貨を提案している{1}。

ブラジルのディルマ・ルセフ前大統領は最近、上海に本部を置くBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を対象とする新開発銀行のトップに就任した。この銀行は、米国が支配する国際通貨基金(IMF)と世界銀行に代わるものである{2}。

ドル依存からの脱却は、他の地域でも顕著である。

先日開催されたロシアとインドの「戦略的パートナーシップ…フォーラム」で、ロシア政府関係者は、BRICS諸国が新しい通貨を創設し、8月に南アフリカのダーバンで開催されるBRICS首脳会議で正式発表する予定であることを明らかにした。

BRICS諸国は「世界人口の40%{3}と世界GDPの4分の1」を占めている。https://peoplesdispatch.org によると、最近和平協定を結んだイランとサウジアラビアはまもなくBRICSに参加する予定である。エジプト、アルジェリア、UAE、メキシコ、アルゼンチン、ナイジェリアも検討しているようである。新しい通貨の価値は、他の通貨ではなく「製品、レアアース鉱物、土壌」の価値に依存することになるだろう。

イランとロシアは1月、米国がドル支配を維持するための手段であるSWIFT銀行システムを迂回するのに有効な方法について合意した。米国の制裁を逃れるため、両国はほとんどの取引で自国通貨に頼っている。

3月に行われたロシアと中国の首脳会談では、二国間貿易を拡大し、自国通貨を活用する意向を改めて表明した。中国は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国との取引で自国通貨を使用することが多くなっている。Global Timesによると、人民元は「{4}世界第5位の決済通貨、第3位の貿易決済通貨、第5位の準備通貨になった」という。

サウジアラビアは石油や天然ガスをドル以外の通貨で販売する寸前{5}であり、中国はそれらの製品に対して時々アラビア湾岸諸国に元で支払っている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の財務大臣と中央銀行総裁は28日、インドネシアで会合を開いた。その議題のトップは、「金融取引における米ドル、ユーロ、円、英ポンドへの依存度を下げ、現地通貨での決済に移行するための議論{6}」であった。東南アジア10カ国の連合体であるASEAN諸国は、加盟国の取引のためのデジタル決済システムの開発を進めている。

ドルの優位性はより身近なところで魅力を失いつつあるのかもしれない。元ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ジム・オニールは、「米ドル{7}は世界の金融においてあまりにも支配的な役割を果たしている。連邦準備制度理事会が金融引き締め、あるいはその反対である金融緩和に乗り出すたびに、ドルの価値に及ぼす影響やそれによる連鎖反応は壮絶である」と述べた。

フィナンシャル・タイムズ編集委員会のジリアン・テル委員長は、「今月の米国銀行の混乱、インフレ、迫り来る債務上限闘争によって、ドルベースの資産の魅力が低下しているとの懸念が広がっている{8}」と指摘している。

さらに、「米国がどれだけの対外資金を必要としているかを考えると、多極化のパターンは米国の政策立案者に衝撃を与えるかもしれない」とも述べている。

さらに広い意味での影響がある。アルゼンチンの経済学者フリオ・ガンビーナは、「世界経済の混乱…(そして)米国の制裁に代表される一国主義の態度」を嘆いている。 3月29日のインタビューで{9}ガンビーナは「富には父と母がいる。労働と自然だ」と指摘した。

彼はこう付け加えている。

    ラテンアメリカとカリブ海諸国は不平等が最も拡大している地域だが、高度に熟練した労働者階級があり、彼らは富の生産を促進する意欲がある。私たちは主権を開発するための共通の資源を持っており、それを通して国民の利益や自然、生命、社会の再生を守ることができるのだ。 

Links:

{1} https://www.britannica.com/topic/Bolivarian-Alliance-for-the-Peoples-of-Our-America

{2} https://peoplesdispatch.org/2023/04/07/towards-de-dollarization-brics-advances-alternative-to-us-dominated-financial-system/

{3} https://www.silkroadbriefing.com/news/2022/11/09/the-new-candidate-countries-for-brics-expansion/#:~:text=In total, the BRICS grouping,will immediately accelerate that process.

{4} https://www.globaltimes.cn/page/202303/1286980.shtml

{5} https://peoplesdispatch.org/2023/04/07/towards-de-dollarization-brics-advances-alternative-to-us-dominated-financial-system/

{6} https://geopoliticaleconomy.com/2023/04/06/dedollarization-china-russia-brazil-asean/

{7} https://www.pmbug.com/threads/tin-foil-hats-economic-reality-and-the-total-perspective-vortex.75/

{8} https://www.ft.com/content/f8f3b2cd-6690-4f26-b81e-e972751c8799

{9} https://rebelion.org/brasil-y-china-acuerdan-intercambios-sin-dolar/

https://www.counterpunch.org/2023/04/14/china-brazil-lead-in-chipping-away-at-u-s-economic-power-abroad/