No. 1895 強硬論者の夏

Summer of the Hawks

ウクライナでの虐殺が続く中、バイデンの外交政策チームでは依然として希望的観測が支配的である。

by Seymour Hersh

トニー・ブリンケン、ジェイク・サリバン、ビクトリア・ヌーランド率いるバイデン政権の外交政策集団のアドベンチャーをのぞいてから数週間が経った。戦争タカ派の3人はこの夏をどのように過ごしたのだろうか?

国家安全保障顧問のサリバンは最近、サウジアラビアのジェッダで今月初めに開催された第2回国際平和サミットにアメリカの代表団を連れて行った。このサミットはMBSとして知られるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導したもので、彼は6月にサウジ政府系ファンドのゴルフツアーとPGAの合併を発表している。その4年前、MBSは国家への不誠実さを理由にイスタンブールのサウジアラビア領事館でジャーナリストのジャマル・カショギを暗殺し、バラバラにするよう命じたとして非難された。

信じがたいことだが、そのような平和サミットが開催され、その主役にはMBS、サリバン、ウクライナのゼレンスキー大統領が含まれていた。いなかったのは招待されていなかったロシアの代表である。サミットには、代表団を送った50カ国弱の国が参加し、首脳はほんの一握りだった。会議は2日間で、国際的な注目はほとんど集められなかった。

ロイター通信は、ゼレンスキーの目的は、「全ロシア軍の撤退と全ウクライナ領土の返還」を含む、戦争解決の基礎として検討する「原則」に対して国際的な支持を得ることだと報じた。この非イベントに対するロシアの正式な反応は、プーチン大統領ではなく、セルゲイ・リャブコフ外務副大臣からだった。彼はこのサミットを、ゼレンスキーの背後にグローバル・サウスを動員するために「西側諸国が無益で破滅的な努力を続けようとしていることの表れ」と呼んだ。

インドと中国はともに代表団を派遣したが、おそらくはサウジアラビアの莫大な石油埋蔵量に惹かれたものと思われる。あるインドの学者オブザーバーは、このイベントは「MBSのグローバル・サウスにおける招集力、王国の位置づけ、そしておそらくもっと狭い意味では、中国がジェイク・サリバンと同席する会議に出席することで、コンセンサスを築こうとするアメリカの努力を手助けする」程度の成果しかないと断じた。

一方、遠く離れたウクライナの戦場では、ロシアがゼレンスキーの反攻を阻止し続けていた。私はアメリカの情報機関の関係者に、なぜバイデン政権の外交政策サークルからサリバンがサウジアラビアでの無意味な会議の司会を務めることになったのかを尋ねた。

「サウジアラビアはサリバンのものだった」とその関係者は言い、「彼はこの会議を、バイデンにとってウィルソン(ウッドロウ)大統領のベルサイユ宮殿に相当するものにしようと計画した。憎き敵に屈辱的な敗北を喫した後、自由世界の大同盟が戦勝祝賀会に集い、次世代の国のあり方を決定する。名声と栄光。昇進と再選。王冠の宝石はゼレンスキーが達成した、稲妻のような春の攻勢の後のプーチンの無条件降伏だ。彼らはサリバンを代表として、世界法廷でのニュルンベルク裁判のようなものまで計画していた。また1つ失敗したが、誰が数えている?40カ国が集まり、オデッサの閉鎖後、無料の食糧を求めて6カ国以外はすべて集まった」と言った。これはゼレンスキーがクリミアとロシア本土を結ぶ橋を再び攻撃したことに対抗して、プーチンがウクライナの小麦出荷を制限したことを指している。

サリバンについてはこれくらいでいいだろう。次はビクトリア・ヌーランドだ。彼女は2014年にウクライナの親ロシア政権を転覆させた立役者であり、私たちが現在の状況にいたる要因であるアメリカの行動の一つだ。ただし現在の戦争を始めたのはプーチンである。超タカ派のヌーランドは国務省の多くの人々の激しい反対を押し切ってバイデンによってこの夏の初め国務副長官代理に昇格した。 彼女が正式に副長官に指名されなかったのは、指名が上院での地獄のような戦いにつながることを恐れてのことだ。

先週、西アフリカの旧フランス植民地のひとつで、フランスの勢力圏にとどまっているニジェールで、クーデターにより親欧米政権が転覆した後、何が利用できるかを見るために派遣されたのがヌーランドだった。民主的に選出されたモハメド・バズーム大統領は、大統領警護隊のトップであるアブドゥラフマン・チアニ将軍率いるクーデター軍によって失脚させられた。将軍は憲法を停止し、潜在的な政敵を投獄した。その他5人の軍人が彼の閣僚に任命された。これらすべてがニジェールの首都ニアメの街頭で莫大な絶大な国民の支持を生み出した。それは西側の介入を阻止するのに十分な支持であった。

西側のメディアは、クーデター支持者の中には路上でロシアの国旗を持って行進する者もいたという暗い報道をした。ニューヨーク・タイムズはクーデターがこの地域におけるアメリカの主要な同盟国であり、膨大な石油とガスの埋蔵量を支配するナイジェリアのボラ・アフメド・ティヌブ大統領への打撃になると捉え、ティヌブ大統領はニジェールの新政府に対し、バズーム大統領に政権を返さなければ軍事行動を取ると脅した。 彼は期限を設定したが、外部からの介入はなく、期限は過ぎた。ニジェールでの革命はこの地域に住む人々にとっては、東西対立の観点からではなく、長年にわたるフランスの経済的・政治的支配に対する拒絶反応としてとらえられた。サハラ以南のアフリカでフランスが支配するサヘル諸国では、このようなシナリオが何度も繰り返される可能性がある。

ニジェールの新政権にとって不利な点もある。ニジェールは、世界に残る天然ウラン鉱床のかなりの部分を保有しているという幸運、あるいは不運な国なのだ。世界が温暖化するにつれて、原子力発電への回帰は避けられないと考えられており、ニジェールの地下に埋蔵されているウラン鉱石の価値に明白な影響を及ぼす。原料のウラン鉱石は、分離、ろ過、加工されると世界的にはイエローケーキとして知られている。

ボルチモアのリアル・ニュース・ネットワークが最近発表した分析によると、「ニジェールでよく言われている汚職は、政府高官による些細な賄賂ではなく、フランスの植民地支配時代に構築された、ニジェールが自国の原材料や発展を確立することを妨げている構造全体のことである」という。フランスのノートパソコンの4台中3台は原子力エネルギーで駆動しているが、その多くはかつての植民地支配者が実効支配していたニジェールのウラン鉱山からのものである。

ニジェールはまた、この地域一帯のイスラム過激派を標的とするアメリカのドローン基地3カ所の本拠地でもある。また、この地域には公式に宣言されていない特殊部隊の前哨基地があり、これらの兵士たちは危険な戦闘任務に就いている間、倍の給与を受け取っている。「現在ニジェールには1,500人の米軍がいるが、この数は1961年にジョン・F・ケネディが大統領に就任した当時、南ベトナムにいた米軍とまったく同じ数だ」と米政府高官は私に言った。

最も重要なことは、ここ数週間の欧米の報道ではほとんど触れられていないが、ニジェールは、ナイジェリアのガスを西ヨーロッパに送るために建設中の新しいサハラ砂漠横断パイプラインの通り道に直接面していることである。ヨーロッパ経済にとってこのパイプラインの重要性が高まったのは、昨年9月、バルト海のノルド・ストリーム・パイプラインが破壊されたためであった。

このような状況の中登場したのがビクトリア・ヌーランドで、バイデン政権内で不運な役割を引き受けたようだ。彼女は新政権と交渉し、追放されたバズーム大統領との会談を取り持つために派遣された。ニューヨーク・タイムズによれば、彼女は「極めて率直で、時にはかなり困難な」交渉をしたが、何の進展も得られなかったと報じている。情報関係者はニューヨーク・タイムズに対して、ヌーランドの発言をアメリカの軍隊用語で表現した。 「ビクトリアはニジェールのウラン所有者を野蛮なロシア人から救おうとして、巨大な中指を突き付けられた」

ここ数週間、サリバンやヌーランドよりも静かだったのはトニー・ブリンケン国務長官だ。彼はどこにいたのだろう?情報関係者にその質問をしたところ、ブリンケンは「米国、つまり米国の同盟国のウクライナが、ロシアに戦争で勝つことはない」と理解したのだという。「CIAを通じてウクライナの攻撃がうまくいっていないという情報が彼に伝わっている。それはゼレンスキーのショーであり、政権内には彼のデタラメを信じる者もいた」

「ブリンケンは、キッシンジャーがベトナム戦争終結のためにパリで行ったように、ロシアとウクライナの和平交渉を仲介したかった。しかし大敗になるだろうとわかり、ブリンケンは自分が性急だったことがわかった。しかし彼はお笑い芸人として語り継がれたくない」

情報関係者によれば、この疑念の瞬間に、CIA長官のビル・バーンズは「沈む船に参加するための一手を打った」と言う。これはバーンズが今年の夏、ロンドン近郊の年次ディッチリー会議で行ったスピーチを指している。彼は、NATOを東方に拡大することに関する以前から抱いていた疑念を捨て、少なくとも5回、バイデンの計画への支持を表明したのである。

「バーンズは自信と野心がないわけではない」と情報関係者は言った。特に熱烈な戦争タカ派であるブリンケンが突然疑念を抱いた時には。バーンズは前政権で国務副長官を務めており、彼がCIAを運営することは正当な報いではなかった。

バーンズは、幻想を失ったブリンケンの後任になることはなく、名ばかりの昇進しか得られないだろう。バイデン内閣への任命だ。C-SPANが記録しているように、内閣は月に一度しか会議を開かず、閣僚会議はきっちりと台本通りに進められ、大統領が用意された文章を読み上げることから始まる。

ほんの数カ月前、ウクライナでの即時停戦はあり得ないと公言したトニー・ブリンケンは、今も職についており、もしこの件について尋ねられたら、ゼレンスキーや政権のウクライナにおける殺戮的で失敗した戦争政策について不満があるという考え方に異論を唱えるに違いない。

したがって、アメリカ国民に現実的な話をするとなると、ホワイトハウスの戦争に対する希望的観測はこの先も続くだろう。しかし終わりは近い。たとえバイデンが国民に提供する評価が漫画のような世界であったとしても。

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