I Wargamed Iran for Obama. This Is the Worst-Case Scenario
元米国政府高官イラン・ゴールデンバーグは長年イランとの紛争を予測し、戦略を練ってきた。彼が学んだ教訓のうち、トランプが学んでいない5つを紹介する。
by Ilan Goldenberg
今週初め、ドナルド・トランプはイランがアメリカの攻撃に対して湾岸諸国を標的に報復する可能性があることを誰も事前に知らせなかったことに驚いたかと聞かれた。彼の 答え?「誰も。誰一人として。ノーノ―ノー。」
これは、トランプが嘘をついているか、あるいは政権が専門家との連携を完全に断ち切ってしまい、米国の専門家の間ではほぼ常識とされていたこと、つまりイランへの大規模攻撃はテヘランが中東全域の石油インフラや米軍基地を標的にし、ホルムズ海峡を封鎖することで報復する可能性があるということを誰も彼に伝えなかったかのどちらかの証拠である。
過去15年間、私は国防総省内および政府外で、イランに関するシナリオ演習やウォーゲーム(軍事的シミュレーション)に参加し、運営を支援してきた。これらの演習は未来を確実に予測するためのものではない。選択がもたらす可能性のある結果を理解するためのものだ。
そしてイランについて、これらの演習から得られた教訓は過去2週間に実際に起こったことと驚くほど一貫性があり非常によく似ていた。トランプが知っておくべきだったこと、そして政権が専門家の意見に耳を傾けていれば知っていたであろう5つのことを以下に挙げる:
1.政権が存亡の危機を感じたとき、イランはエスカレートするだろう
ほとんどのウォーゲームで紛争は低いレベルから始まる:イスラエルの攻撃、代理勢力による攻撃、誤算。その段階でイランは通常、対応を調整する。報復はするが米国を紛争に完全に巻き込むことは避けようとする。なぜなら米国との全面戦争は甚大な脅威となることを知っていたからだ。このパターンは2024年と2025年のイスラエルとイランの衝突においても現実に当てはまった。
しかし、米国が直接介入し、政権が自らの存続が危ぶまれると確信すればそうした制約は消え去る。
その時点でイランの戦略は十分に理解されていた:米軍基地への攻撃、湾岸海域での船舶への妨害行為、地域全体で代理勢力の活動、そして石油インフラや民間資産への攻撃。その目的は、米国に損害を与え、原油価格を高騰させ、ワシントンに攻撃停止を求める国際的な圧力をかけることである。
これは容易に予測できたことだ。私が目にした一連の演習において、最も一貫して導き出された結論の一つだった。今私たちが目にしている事態は、完全に予測可能だった。
2.ホルムズ海峡を閉鎖するのは簡単だが、再び開くのは難しい
こうしたシナリオから得られる一つの重要な教訓は、地理的な近さゆえにイランがホルムズ海峡を混乱させるのがいかに容易であるか、そして米国が信頼と安全な航行を回復するのがいかに困難であるかということだ。
かつては、特に機雷による完全封鎖はイラン自身の輸出も阻害するため最終手段だと考えられていた。しかし、今回の戦争で明らかになったのは、イランは海峡を完全に封鎖する必要はないということだ。ドローン攻撃、ミサイル攻撃、脅迫、そして選択的な妨害行為によって十分な不確実性を生み出し、船舶の航行を阻害し、価格を高騰させるだけで十分なのだ。
同時に、イランは依然として相当量の石油を、特に中国へ輸送できている。つまりイランは自国の収益を確保しながら、世界経済に打撃を与えることができるのだ。
私が こうしたシナリオを検討し、経済学者やエネルギー専門家を招集したところ、大規模な戦争が発生すれば、原油価格は数ヶ月間1バレルあたり175ドルから200ドルまで急騰し、戦闘終結後も長期間にわたり、80ドルから100ドルの価格で世界市場にリスクプレミアムが残る可能性があるという結論に至った。この基本的な論理は今でも有効である。
3.ロシアは常に勝つ
ロシアチームがこれらのゲームに出場する時、たいてい守りの姿勢を取り、恩恵を受けた。
まさに 今、それが起こっている。原油価格の上昇は主要輸出国ロシアに利益をもたらす。世界市場の安定化を求める圧力により、ロシアのエネルギー販売に対する制裁が緩和される。そして、本来ウクライナ支援に向けられるはずだったアメリカの関心、軍事力、政治的な資源が中東へ振り向けられる。
ウラジーミル・プーチンにとってこれは理想に近い:収入が増え、圧力は減り、アメリカの注意をそらす。
これらはこの種の紛争について真剣に考えたことのある人なら驚くべきことではない。
4.戦後の代償は計り知れない
イラク戦争後、米国の政策立案者たちは本当の危険は戦争の始まり方だけでなくその後に何が起こるかにあることを理解していた。だから我々はイランの紛争後のシナリオをシミュレーションすることに多くの時間を費やした。
結論は厳しいものだった。全面的な侵攻や政権交代――それはあまりにも代償が大きすぎる――を除けば、空軍と海軍による戦争では政権は存続する可能性が高い。弱体化し、打撃を受け、屈辱を味わうだろうが、それでもなお存続する。軍隊は弱体化し、経済とインフラは壊滅的な打撃を受けるだろう。しかし政権は生き残り、ほぼ間違いなく、より攻撃的になり、リスクを冒すことを厭わなくなるだろう。
そうした世界では、何年にもわたり米国は、傷つきながらも依然として危険なイランを封じ込めることになる。1990年代の第一次湾岸戦争後のイラクを考えてみてほしい。敵対的な政権が存続し、封じ込めるために高額な費用をかけて長期にわたる米国の軍事介入が必要だった。
違いは、今日の米国は1990年代のように唯一の超大国としての行動の自由を享受していないことだ。中国は主要な競争相手である。ロシアは依然として深刻な脅威である。我々は再び長期にわたる中東封じ込め作戦に巻き込まれる余裕はないのだ。
5.時間を稼ぐことが常に最善の選択肢だった
これらのウォーゲームから最終的に私が学んだのは、イラン問題に関してはどの選択肢も良くはないが、戦争はその中でも最悪の部類に入るということだ。より賢明な選択肢は、封じ込め、抑止、圧力、交渉を行い、86歳の最高指導者アリー・ハメネイ師の死を待ち、より現実的あるいは穏健な指導者が後を継ぐかどうかを見守ることだった。
それは様々な形を取り得た。バラク・オバマは包括的共同行動計画(JCPOA)を通じて外交を試み、 トランプが合意から離脱するまでイランの核開発計画を効果的に抑制した。さらに最近では、抗議デモ参加者に対する残忍な弾圧の後、 制裁措置の強化、イランの孤立化の深化、そして政権内部で高まる不満を利用して政権を内部崩壊させるという選択肢もあった。
米国とイスラエルは、戦争にエスカレートさせ、ハメネイ師を殺害し、政権に対する極度の脅威という状況下で指導者の交代を強行することで、イラン国内において、いざという時に最優先事項は考え直すことではなくただ生き残ることだけ、にしてしまった。その結果としてイスラム革命防衛隊に近い新たな強硬派指導者が誕生したのは驚くべきことではない 。歴史的な機会が失われたのだ。
結論は単純だ。
米イラン間の大規模な戦争は予測不可能なブラックボックスではない。人々は何十年にもわたり、その可能性を研究し、様々なシナリオを想定し、その影響を考察してきた。そしてその結論は常に:イラン、米国、中東地域、そして世界経済にとって、計り知れないほどの損失をもたらすだろう、というものだった。
このような戦争に真の勝者はいない――おそらく、ウラジーミル・プーチンを除いては。
だからこそ数十年にわたり、両党の大統領は専門家の意見に耳を傾け、この問題を避けようとしてきたのだ。トランプがその状況を終わらせるまで。